00 最終的にはこうなりました

文字数 561文字

「よく来たな、勇者ルルよ。さあ、かかってくるがいい」

 魔王は戦闘態勢を取ったが、いっぽうの勇者ルルは、クスッと笑った。

「そんなことより、魔王さま」

 彼はゆっくりと魔王のほうへ歩みよる。

「な、なんだ……?」

 両腕を魔王に絡ませる。

 体に吸いついてくるようなそれは、彼を戦慄させ、心をかき乱した。

「僕はね、魔王さま。あなたに悪いことをするのを、もうやめてほしいんです」

 指先が魔王の皮膚をなでる。

 その動き、その感触は妖艶で、彼の心を骨抜きにした。

「魔王さまの体、素敵だなあ。ほんと、ぼくごのみだ」

 ルルの態度に魔王は困惑している。

「勇者よ、おまえはいったい、何を考えている?」

 クスリ。

 ルルはまたほほえんだ。

「ねえ、魔王さま。これからどうするか、ゆっくりと話し合いませんか? ベッドの中でね……」

「……」

 ほどなくして、魔王は人間に不可侵の協定を提案した。

 異なるさまざなな種族どうしが、互いに歩みよりを見せ、異世界にはついに平和がおとずれた。

 なぜこんなことが起こったのか?

 なぜ彼が、たかがひとりの少年に過ぎないルルが、そんなことを成し遂げられたのか?

 それは誰でも知っているのだが、誰も口に出したりはしない。

 これは肉体によるコミュニケーションによって、異世界をひとつにまとめ上げた、ひとりの少年のストーリーである。
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