09 ラクスとゼオ

文字数 1,309文字

 ゼオは一晩中、ルルを求めた。

 彼の心の中は、魔性の少年のことでいっぱいだった。

 もうこいつなしでは生きられない、そう思い知らされた。

 ルルのほうもそれに答え、オオカミの王だった少年を、自身の世界へと落とし込んでいった。

 ゼオはひざをつき、頭を下げ、仲間にしてほしいと懇願した。

 魔性の少年への想いと、その忠誠を誓った。

 すべては思いどおり。

 ルルは申し出を受け入れた。

   *

 一夜明けて。

 ルルとラクスのパーティーに加わったゼオは、オオカミ族の部下たちに別れを告げ、根城をあとにした。

 彼の案内で森の中を歩き、しばらくすると視界が開けて、だだっ広い大地へと出た。

「あそこに見えるのがラグーン王国だ」

 ゼオは広野のずっと先を指さした。

 そこにはかなり遠いようだが、確かにお城らしき建物が見える。

「どれくらいかかる?」

 ラクスがたずねた。

「半日も歩けば着くはずだ。食料や飲み物を確保しておいたほうがいい」

「半日か、ずいぶんと長いな。ルル、どうする?」

 ゼオとのやり取りを受け、彼はルルに判断をゆだねた。

「そうだね、食料はゼオがたっぷり用意しておいてくれたし、あそこに川が流れているから、水はそこで補充しよう」

 こうして三人は川へと向かった。

   *

「ついでだから少し休んでいこうよ。森を抜けるので二人とも疲れたでしょ?」

 ルルの提案はごく自然なものだったから、ラクスもゼオも受け入れた。

 三人は川べりに腰を下ろし、しばらく休憩をすることにした。

「ふふっ」

「どうしたんだい、ルル?」

「気色悪いぞ」

 ほほえんでいるルルを、ラクスとゼオは不思議がった。

「いや、対照的だなと思って。ラクスとゼオってさ。キャラ的にもそうだし、やっぱりその肌の具合のコントラストとか、そそるじゃない?」

「……」

 彼の考えていることが容易にわかったので、二人は顔を見合わせた。

「ねえ、二人でしてみてよ。ふふっ、見たいんだ、ラクスとゼオがするところ」

「それ、は……」

 二人ともどぎまぎしたが、ルルの言葉が頭の中に刺さりこんできて、すぐに顔が赤くなった。

「エルフとオオカミがするところ、見てみたいなあ」

 ルルの瞳がギラリと光った。

「あ……」

 もうじゅうぶんに手なずけられた彼らが、その術中に落ちるのに、時間など必要なかった。

「ん、ゼオ……」

「ラクス……」

 二人は引き寄せられるように、ひとつに重ね合わせた。

「ふふっ、いいねえ二人とも。仲よくなるためには手っ取り早いから、さあ、遠慮なくどうぞ」

 ルルは大きな石の上に座って、二人に続けるよう、うながした。

 ラクスとゼオはいそいそと服を脱いでいく。

 どう振る舞えばいいのかは、何の問題なく理解できた。

 すべてはルルに施された刻印が教えてくれる。

「ゼオ……」

「ラクス……」

 二人は互いを侵蝕するように、少しずつ、だが確実に、肉体と精神を解き放っていった。

 愉悦や恍惚、わきあがるさまざまな衝動が、複雑に彼らを絡めあげ、ひとつに溶かしていく。

 ルルは心の底から満足していた。

 延々と愛し合う美しい少年たちを、静かに見つめ、ほほえみつづける。

 魔性の黒い両眼には、落ちていく二つの影が、しっかりと映りこんでいた。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み