13 勇者たちと長い夜 ゼオの場合

文字数 1,280文字

 シグとジエルに引きずられ、ラクスはよちよちと会議室の大広間へと入った。

「う……」

 そこではゼオが、加工した木製の枠を組んで、鉄製の金具でしっかりととめた、特別な入れ物の中にはめ込まれていた。

 いかにも苦しそうなかっこうにされ、国王の重臣やその取り巻きの役人たちの好き放題にされている。

 彼らはもちろんジエルの術式で人形に変えられているし、ゼオ自身も魔術によって骨の髄までほてらされていた。

「おらっ、もとオオカミの王さまなんだろ? ちゃんと奉仕しろや!」

「ケダモノ風情がいきがるからこうなるのだ!」

「休むんじゃねえよ、クズが!」

 こんなふうに、本性を丸出しにされた男たちは、なすがままにゼオをオモチャにしている。

「ははっ、見ろ、ラクス。畜生ごときが図に乗るからああなるのだ」

「ふぐ、ふぐうっ!」

「まあ、おまえも、いまではすっかり畜生のナリだがなあ、はははっ!」

 シグは高らかに笑い、ラクスを嘲笑した。

「高貴高尚なるエルフ族の戦士さまが、このように犬になりさがっているのですからね」

 ジエルも同調してクスクスと笑った。

 ゼオは休む暇もなく、男たちの相手を強制されている。

「ラクス、前へ出ろ。面白い趣向を思いついた」

「ふふ、なるほどですね」

 シグとジエルは顔を合わせてニヤリとした。

「――っ!」

 鎖が引かれ、首輪がかしゃんと音を鳴らす。

「ほら、前へ出ろと言ったろう? 歩かんか! この役立たずの駄犬が!」

「ううっ……」

 しかたなくラクスは、涙もしとどにおずおずと這っていった。

「皆の者、ゼオの縛りを解いてやれ」

 一同、言葉も発せずにしたがう。

 その顔は愉悦にゆがんでいた。

「う……」

 ゼオはすでにボロ雑巾のようにされている。

 目もうつろで、意識もギリギリのところにあるようだ。

「ラクスよ、ゼオとつがえ」

「……」

「オオカミとエルフが交わるところ、ぜひとも拝んでみたい」

 ラクスは戦慄した。

「ほら、言うとおりにせんか!」

「――!」

 うしろに激痛が走って、いや、それはすぐに快楽へと変換されるのだが、彼は反射的に前へとあゆみだす。

「はは、すっかり優秀な犬になりましたねえ、シグ?」

「まったくだジエル、エルフのエリート戦士さまが聞いてあきれるな」

 ラクスとゼオ、二人の距離が縮まっていく。

「ほら、つがえ。そしてわたしの愛する忠臣たちを慰めてやるのだ」

 こうして背徳の宴は開始された。

 男たちはその光景を舌なめずりをしながら楽しんだ。

「この場はおまえたちに任せたぞ? このバカどもに思う存分、罰を与えてやるのだ。わが国をはずかしめたとが、思い知らせてやるがよい」

「は、シグさま」

 男たちの手が二人に伸びる。

 エルフとオオカミの少年は、多勢に無勢でむさぼられ、食らいつくされた。

 その饗宴は永遠に続くかのように映った。

「さて、シグ?」

「ああ、ジエル。逆賊のリーダー、勇者をかたる不届き者のルル、あやつこそ最大の罰を受ける義務がある。さしあたって様子を見に行ってみようではないか」

「くくく……」

「ははっ、ふはは!」

 こうして二人は、ルルが捕らえられている地下の牢獄へと向かった。
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