4)第2章 1
文字数 1,115文字
「被害者の身近な人物の中に、襲う動機を持った者がいないか推理すると言うことは、つまり、設計課の中から仮定の容疑者を見付けるということです」
私は言いながら立ち上がり、ホワイトボードに設計課の人達の名前を書いていった。
雪下課長、家永課長代理、夏原主任、月元主任、菱山さん、田乃崎君、真名部君、伊津さん、高見さん、笹木さん。
「あの。私がこんなことを言ってたなんて、秋河さんも他言無用でお願いします」
Dr.ディアスを真似してボードを使ってみたけど、ふと我に返ると不安になった。
「大丈夫よ。ここだけの話にするわ。あくまでも、緒野さんが話しやすくなるための手段だから」
係長も私の隣りに立ち、一緒にボードを眺めた。
「高見さんは一年以上出社してないから除外しましょう。笹木さんって誰?ああ、最近入った派遣の子ね。この子も除外していいんじゃないかしら」
秋河さんは赤いマーカーで、二人の名前に打ち消し線を引いた。
「残りの人達の中で、緒野さんにとって分かりやすい人は誰?」
「田乃崎君ですね」
私は田乃崎君の名前の横へ丸印を付けた。
私がDr.ディアスをお気に入りの理由は、容姿もだけど、プロファイルを通じて人を分析する能力に憧れているからだ。
私自身、幼少期の頃から他人を分析するのが癖になっていた。
分析するために、他人へ興味を向けることは普通だった。
皆もそんなもんだろうと思って成長したけれど、他の人はそれほど他人に関心が無いと知ってからは、あからさまに興味を示すのは止めた。
うっかり生い立ちなんかを深堀りしたら、同性には警戒されるし、異性の場合には自分に気があると勘違いされる。
田乃崎君にも誤解されるところだったと、これまでの田乃崎君の言動を思い浮かべながら思い返していた。
田乃崎君はよく愚痴は言うけれど、誰かをひどく憎んだり強く嫌ったり、他人に対しての、そういった情熱が無い。
多分だけど、その逆で誰かを猛烈に好きになることも無いんだろうと思う。
人や出来事に対して執着を持てない人もいる。
ストーカーにはなりそうもないから安全だけど、こんな人を好きになったら、それはそれで辛いなと、女子目線では考えたこともある。
「田乃崎君には特に嫌っている人や、恨んでいる人はいないと思います。設計課の他の方々は、雪下さんのやり方に馴染めないからと苦労してるみたいですが、田乃崎君は平気そうですし」
そこまで言って、はっと口を閉じた。
雪下課長が部下から信頼されていないことを、私の口から明かしてしまった。
さすがに、調子に乗り過ぎではないだろうか。
「雪下さんにも困ったものよね。営業課や工事課からも不平不満は聞いてるわ」
係長があっさりと言ったので、私はほっと胸を撫で下ろした。
私は言いながら立ち上がり、ホワイトボードに設計課の人達の名前を書いていった。
雪下課長、家永課長代理、夏原主任、月元主任、菱山さん、田乃崎君、真名部君、伊津さん、高見さん、笹木さん。
「あの。私がこんなことを言ってたなんて、秋河さんも他言無用でお願いします」
Dr.ディアスを真似してボードを使ってみたけど、ふと我に返ると不安になった。
「大丈夫よ。ここだけの話にするわ。あくまでも、緒野さんが話しやすくなるための手段だから」
係長も私の隣りに立ち、一緒にボードを眺めた。
「高見さんは一年以上出社してないから除外しましょう。笹木さんって誰?ああ、最近入った派遣の子ね。この子も除外していいんじゃないかしら」
秋河さんは赤いマーカーで、二人の名前に打ち消し線を引いた。
「残りの人達の中で、緒野さんにとって分かりやすい人は誰?」
「田乃崎君ですね」
私は田乃崎君の名前の横へ丸印を付けた。
私がDr.ディアスをお気に入りの理由は、容姿もだけど、プロファイルを通じて人を分析する能力に憧れているからだ。
私自身、幼少期の頃から他人を分析するのが癖になっていた。
分析するために、他人へ興味を向けることは普通だった。
皆もそんなもんだろうと思って成長したけれど、他の人はそれほど他人に関心が無いと知ってからは、あからさまに興味を示すのは止めた。
うっかり生い立ちなんかを深堀りしたら、同性には警戒されるし、異性の場合には自分に気があると勘違いされる。
田乃崎君にも誤解されるところだったと、これまでの田乃崎君の言動を思い浮かべながら思い返していた。
田乃崎君はよく愚痴は言うけれど、誰かをひどく憎んだり強く嫌ったり、他人に対しての、そういった情熱が無い。
多分だけど、その逆で誰かを猛烈に好きになることも無いんだろうと思う。
人や出来事に対して執着を持てない人もいる。
ストーカーにはなりそうもないから安全だけど、こんな人を好きになったら、それはそれで辛いなと、女子目線では考えたこともある。
「田乃崎君には特に嫌っている人や、恨んでいる人はいないと思います。設計課の他の方々は、雪下さんのやり方に馴染めないからと苦労してるみたいですが、田乃崎君は平気そうですし」
そこまで言って、はっと口を閉じた。
雪下課長が部下から信頼されていないことを、私の口から明かしてしまった。
さすがに、調子に乗り過ぎではないだろうか。
「雪下さんにも困ったものよね。営業課や工事課からも不平不満は聞いてるわ」
係長があっさりと言ったので、私はほっと胸を撫で下ろした。