13)第6章 1

文字数 524文字

「容疑者としての柏居さんは、緒野さんから見てどうかしら?」

柏居さんは、どうやったら自分の魅力が引き出せるか、引き出した魅力をどうやって人に気付かせるかに、人生の比重を傾けている人だと思う。ある意味とても分かりやすい人だ。

「例えば、自分よりモテる人が許せないとか」
そう言った秋河係長に、私は苦笑してしまった。

あまりにも柏居さんのことを分かっていないと思った。

柏居さんの関心は常に自分自身だけ。
他人の評価を下げるとか、目障りな人物を排除しようとか、そういったことに時間を掛けるなんて、柏居さんという人物からズレている。

「柏居さんの場合、自分を裏切った相手とか、自分に振り向かなかった相手なら、攻撃するってことはあるかもしれません」

待ち合わせに遅れて来た彼氏をボコった話は、何度も聞いてきた。

自分が第一優先というのが、柏居さんの行動原理なのだと思う。
そして自分が一番輝いているのが当然だから、他人に嫉妬なんてしないのだ。

だけど、彼氏を殴った後はいつも後悔して、自分にはDVの傾向があると、落ち込んでいるのを知っている。
心のケアは必要かもしれないけど、根は悪い子じゃない。

「なるほどね」
何を思って納得したのかは分からないけど、秋河さんはしきりと頷いていた。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み