後書き

文字数 2,253文字

『橋の彼方』という物語は僕が高校三年生、大体今から十年前に思い付いた物語だった。受験勉強に専念したい時期だったから、大学に入ってから書き始めた。昔自分の書いたブログを振り返って見たけど、大学で書きたい物語は三つあったことを思い出した。しかし思いの他に、『橋の彼方』を完成するのに一年半近くもかかった。書き終わったら自分の中にインスピレーションがなくなり、最後の作品になってしまった。
高校の時は半年ぐらいに一つ物語を完成させたけど、何故この物語だけ三倍の時間もかかったというと、当時の僕の心の泉は枯渇寸前だったからだ。僕はセンチメンタルになる時にしかうまく書けないから、そうするために沢山小説を読むし、センチメンタルになりやすいように自分の精神構造を意図的に改造した。それがある意味僕を苦しんでいたので、書き終わってようやく解放されたって気分になった。でも物語については、今までに書いた物語の中で一番完成度の高い物で、一番納得している作品であった。
この三ヶ月間、一日に一話というペースで書き直してきたが、元はもっと緩いペースで、何日かけて一話書き上げるとか、自分から駄目出しで次の日にまた書き直したとかで、かれこれ一年半かけた羽目になった。大学に入って授業やらサークルやら趣味(ACG全盤に)やら色々忙しくて、小説を書くのに振り分けられた時間は一日二時間くらいだったという理由もあったと思う。そうやって毎日の課題のように二時間ぐらいかけてこの小説を書き上げた。細々とエピソードが分かれているのもそのせいだと思う。ここ三ヶ月間もほぼ毎日何時間かけて一話書き直すペースで昔を思い出して、懐かしい気分だ。
最初は「ヨスガノソラ」というアニメを見て、僕も双子の物語を書きたいと思った。読んできた小説や見てきたアニメやゲームから色んな知識やアイディアをもらって、参考しながらこの物語を書き上げた。全体的には村上春樹の『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』を意識して書き上げた。その小説は僕のお気に入りなので、その小説に啓発されて『橋の彼方』という小説があったと思う。第一章以外は『世界の終わり(以下略)』と似たような構造で、二つの視点を交差しながら書いてきた。終章はまあ、そこまで書いて第三の視点が必要だと気付き付け加えた。僕は純文学を読むし、ラノベや漫画、ゲーム、アニメなど日本の文化も色々楽しめた。その影響が作品に色濃く出ていると思うので、自分が書き上げた作品をどの分野に入れるかは迷っていた。自分じゃよくわからないや。でも、この物語を誰よりも好きなのは間違いないのだ。僕が自分のために書いた、私小説だからだ。
趣味で小説を書いてきたが、誰かに見せるのが恥ずかしくて公表しなかった。大体日本人じゃいのに、日本を舞台に日本人の小説を書くとか、回りから見て頭がおかしいやつだと思われるのがオチだろう。日本語を勉強して、N1資格を取得して、日本語のゲームや小説も翻訳なしでも楽しめてきたから、自分の日本語に自信があった。書き上げ物語を日本語に書き直したいと思った。しかし大学の時三分の一まで進んで、中途半場で諦めた。未熟な日本語で書いた物に納得していなかったからだ。
何故今になって再び書き直したかというと、一度諦めていたことを拾い上げたいからだ。28になった去年で、小説を書くのをやめたのは7年目だった。七年間、僕は何も感じないように生きてきた。過ぎ去った日々はすぐ忘れるし、知り合ったやつと別れればそれきり会うことがなくなった。自分の殻に固く閉じ込めてきたから、新しい物語は生まれてこなかった。それでも心の中でいつかは物語をまた書くという気持ちはあった。そう思いながら、一歩踏み出さない日々の中で、焦燥感を感じた。前々から思い付いた物語はまだ二つ書いていなかった。一つはファンタジー風の魔法物語、もう一つはSF風の犯罪物語だった。どれも冒頭や設定とか色々考えてきたが、結末は見えなかったし、何より書くのに必要なインスピレーションは足りなかった。だから昔自分の書いた小説を見直して、気持ちの整理のために色々書き直した。好きな作家の村上春樹は大体今の僕と同じぐらいの年頃で小説を書き始めたらしいが、自分も彼に習ってもう一度頑張って見ようかなと思った。自分は才能のない人間だという自覚はあるから、人気作家というのは小説の中で叶うだけ結構だ。読んでくれる読者に、少しでも僕の心を、伝えたいことを感じてくれればそれで満足なのだ。読んでくれる人がいると知って、毎日アクセス数を確認して嬉しくなる自分がいた。それを糧に、これからも書き続けたいと思うようになった。
高校の時に書いた小説も、日本語に書き直すのか、正直迷っている。青臭い自分を振り返るようなことなので、結構勇気が必要だと思う。今でも新しい物語を上手くかける自信がないから、もうしばらく昔の自分を見直そうかな、とも思った。
とにかく、『橋の彼方』という物語はこれを持って完結した。長々と僕のつまらない独り言みたいな文章を読んできた読者の皆さん感謝する気持ちである。誤字脱字とか、文法的におかしいとか指摘してくる人がいなかったので少し心細いが、少しでも僕の書いた物語を楽しめたならそれで幸いに思った。コメントしてくれればもっと嬉しいかもしれない(叩くような言葉なら傷付くけど)。
まあ、こんな感じな作者だけど、今まで付き合ってきてくれた読者の皆さんに、
ありがとうございました!
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