第52話
文字数 412文字
ハルも必死についていった。無理に合わせているという、意識はなかった。
友人にとって、その作家はガラスの彫刻であったのかもしれない。
それは、カリスマ的な魅惑を纏い、全てが美しく見えるような感覚。
そして文字通り、手の届かない場所に存在していた。
それでも、友人はガラスの彫刻に手を伸ばした。
ハルもまた続いた。
友人の手を掴もうと、続いた。
最終的に始めから、失敗した。
「おめでとう。幸せになって」
チクンと胸が痛んだ。大切な友人からの、心からの言葉だったから。
金が全てである内側の世界にいても、本当に欲しいものを買うことができないこともある、と悟った。
誰かと誰かの願いが同時には叶うことは、奇跡に近いことであることも。
心の中にまで滑り込んで見た情景は、その言葉を言われた瞬間、彼の中から消えて去ってしまった。
ー嫌なこと思い出した…
ハルは瞼を閉じる。
「ハルお兄ちゃん。ハルおにーちゃん」
何度目かの茉璃の声に振り返り、彼女の元へ戻っていった。
友人にとって、その作家はガラスの彫刻であったのかもしれない。
それは、カリスマ的な魅惑を纏い、全てが美しく見えるような感覚。
そして文字通り、手の届かない場所に存在していた。
それでも、友人はガラスの彫刻に手を伸ばした。
ハルもまた続いた。
友人の手を掴もうと、続いた。
最終的に始めから、失敗した。
「おめでとう。幸せになって」
チクンと胸が痛んだ。大切な友人からの、心からの言葉だったから。
金が全てである内側の世界にいても、本当に欲しいものを買うことができないこともある、と悟った。
誰かと誰かの願いが同時には叶うことは、奇跡に近いことであることも。
心の中にまで滑り込んで見た情景は、その言葉を言われた瞬間、彼の中から消えて去ってしまった。
ー嫌なこと思い出した…
ハルは瞼を閉じる。
「ハルお兄ちゃん。ハルおにーちゃん」
何度目かの茉璃の声に振り返り、彼女の元へ戻っていった。