随想 短歌が生まれるとき

文字数 729文字

 詠みたくなった僕は、短歌の本をさがしていた。ふと目に留まった本の表紙には『短歌はじめました』と題されている。本を開くと、短歌の会ができた経緯が記されており、どうやらその会に集まってくる短歌を歌人二人と短歌の会をつくった方が評したものが編集されているらしいと読み取った。
 年齢や性別は関係なく、国籍も前科や刺青の有無も関係なく集まった短歌は自由に詠まれており、素直な思いが伝わってきた。
 ふと受験生向けの英文解釈の本にある英文が脳裏をよぎる。調べてみると、頭の片隅にぼんやりと読んだ記憶を残していた英文は次のようなものだった。

A sensitive and skillful handling of the language in everyday life, in writing letters, in conversing, making political speeches, drafting public notes, is the basis of an interest in literature. Literature is the result of the same skill and sensitivity dealing with a profounder insight into the life of man.

 この英文が誰の手によるものなのか、出典が記されておらず自分にはわからなかった。それはともかく、(くだん)の本にあった短歌には、日常生活での一瞬間の情景や抒情(じょじょう)が詠まれており、こうした人間の心象が洗練されたもの、あるいは経験に対する深い洞察が、表現の巧みな詠人(よみびと)の心に去来するとき、自然と短歌が生まれるのだろうと思われた。
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