詩 五編 3

文字数 382文字

1 雪の結晶

舞い降りる
雪の形に (あらわ)れる
調和のとれた 六角形
誰の手に成る ものなのか

2 自裁(じさい)

向日葵(ひまわり)の 似合う乙女に 
秘められた
心の奥の 悩みごと

絶えかねて 乙女はつひに
命絶ち

人は知る 笑顔の裏に
秘められた
心の奥の 思ひ(わづら)

3 飼いならされたトラ

猛々(たけだけ)しき 
(きば)の抜かれた 猛獣よ

鋭き(まなこ)失われ
身体(からだ)はひどく丸み帯び

人に飼われた密林(みつりん)の王

4 浦風(うらかぜ)

一ノ谷
古きいくさ()
たづぬれば

古寺(こてら)故事(こじ)
おもひいで

吹かぬ笛聞く
須磨(すま)の浦風

5 祈り

幼児の舌は(かわ)
老いた女はパンを求めるが
飢えは満たされない

男の首は切り裂かれ
女は犯され
子どもの前で親が撃たれる

彼らは叫ぶ

もう死なせてください
主よ
私の命をはやく取り去り
休ませてください

権力の座にある者がしもべを踏みにじる
主よ
どうして眠り続けるのですか
裁きを目にするのはいつなのですか

暴君がわれらを踏みにじる
主よ
私たちを滅ぼすのですか
眠りから目覚めてください
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