11 部長は友人と話す
文字数 836文字
「昨日も言ったけどさ、私達ね、ずっと心配だったんだよ。」ナポリタンを食べながら明日菜が言う。
「私はさ、やりたい事だけやって生きてたし生きてくからさ、一人だけすぐ会社辞めちゃってさ、今もフリーターしながら劇団やって、周囲にもこの人にも沢山迷惑かけて、沢山助けてもらってるの。」明日菜は節子を見る。
「あたしは好きなように生きる明日菜をずっと見てたいだけ。」節子も明日菜を見た。しばしの間の後明日菜が続ける。
「でさ、ひろ子は私と真逆じゃん。周囲の人達のために自分がどうあるかを一番に考えて、ちゃんと期待に応えて周囲の求める役割を果たしてる。それ凄く凄いよ。」
明日菜がおかしな日本語で喋る時は、正直な気持ちを話してくれている時だ、と長い付き合いの中で疋嶋丸は知っていた。
「まぁこれでも何だかんだ仕事好きだからね。」と疋嶋丸は困ったように笑って言う。
「でもバランス悪いんだよひろ子は。自分の気持ち、全部後回しでしょ。」と節子は言った。口調は少々強かったが語調はむしろ穏やかだった。節子もまた、自分と真っ直ぐに向き合ってくれているのだ、と感じ疋嶋丸は胸を熱くした。
ふいに、でもおもむろに店長がテーブルに小皿を3つ置いた。
「サービス。抹茶とキャラメルと、こっちがカスタード」他の客の手前、少し小声で店長はそれぞれを指して言った。
「わぁ!ありがとう~!」
「美味しそう、有難う御座います。」
明日菜と疋嶋丸が声を上げ店長に礼を言った。
「うちらの好み、覚えててくれたんですね。」節子が驚いたように言うと、店長ははにかんで
「今日は有難うね、久しぶりに会えて嬉しかった。」と笑顔で言った。彼女達の大きな声のリアクションで店長の気遣いは無駄になってしまったが、常連客は別段気にした風でもなかった。
「私さ、私ね。」
口元を拭いて疋嶋丸は居住まいを正した。
――明日菜も節子も私を思ってくれている、だからこの親友2人には包み隠さず話していいんだ。
2人を交互に見据えて彼女は言った。
「やってみたい事があるの。」
「私はさ、やりたい事だけやって生きてたし生きてくからさ、一人だけすぐ会社辞めちゃってさ、今もフリーターしながら劇団やって、周囲にもこの人にも沢山迷惑かけて、沢山助けてもらってるの。」明日菜は節子を見る。
「あたしは好きなように生きる明日菜をずっと見てたいだけ。」節子も明日菜を見た。しばしの間の後明日菜が続ける。
「でさ、ひろ子は私と真逆じゃん。周囲の人達のために自分がどうあるかを一番に考えて、ちゃんと期待に応えて周囲の求める役割を果たしてる。それ凄く凄いよ。」
明日菜がおかしな日本語で喋る時は、正直な気持ちを話してくれている時だ、と長い付き合いの中で疋嶋丸は知っていた。
「まぁこれでも何だかんだ仕事好きだからね。」と疋嶋丸は困ったように笑って言う。
「でもバランス悪いんだよひろ子は。自分の気持ち、全部後回しでしょ。」と節子は言った。口調は少々強かったが語調はむしろ穏やかだった。節子もまた、自分と真っ直ぐに向き合ってくれているのだ、と感じ疋嶋丸は胸を熱くした。
ふいに、でもおもむろに店長がテーブルに小皿を3つ置いた。
「サービス。抹茶とキャラメルと、こっちがカスタード」他の客の手前、少し小声で店長はそれぞれを指して言った。
「わぁ!ありがとう~!」
「美味しそう、有難う御座います。」
明日菜と疋嶋丸が声を上げ店長に礼を言った。
「うちらの好み、覚えててくれたんですね。」節子が驚いたように言うと、店長ははにかんで
「今日は有難うね、久しぶりに会えて嬉しかった。」と笑顔で言った。彼女達の大きな声のリアクションで店長の気遣いは無駄になってしまったが、常連客は別段気にした風でもなかった。
「私さ、私ね。」
口元を拭いて疋嶋丸は居住まいを正した。
――明日菜も節子も私を思ってくれている、だからこの親友2人には包み隠さず話していいんだ。
2人を交互に見据えて彼女は言った。
「やってみたい事があるの。」