第22話:リーマンショック2

文字数 1,535文字

 しかし、9月に入ってリーマン・ブラザーズの経営不安が市場で高まると投資家は資金を引き揚げるべく株式売却を加速させ言わば銀行資本への取付けとも呼ぶべき状況が発生。とりわけ投資銀行の株価はリーマン・ブラザーズの連想もあって9月中旬にかけて急落し政府の金融安定化策等を受け一時持ち直す時期もあったものの、10月以後も下落傾向が続いた。

 また、アメリカの主要金融機関におけるCDSスプレッドの推移をみると9月中旬にスプレッドが跳ね上がり、その後も少し落ち着きはみせつつあるものの依然として高水準で推移していることが分かる。とりわけ、投資銀行についてはスプレッドが一時1000ベーシスポイントを超えるところが現れるなど、市場が当該金融機関の存続可能性に強く疑念を抱いていたことが伺われる。

 次に、カウンターパーティー・リスクや流動性リスクを表すTEDスプレッド「短期国債金利とロンドン銀行間市場金利『LIBOR』の金利差」の推移をみると過去には2007年8月のいわゆるパリバ・ショック直後、同年末に資金調達不安が高まった時期、そして、2008年3月の大手投資銀行ベア・スターンズの救済買収といった金融市場の混乱が高まりをみせた局面において拡大してきた。

 しかし、2008年7月のGSE経営不安を契機に再度拡大に向かい、9月のリーマン・ブラザーズの破綻をきっかけに急拡大していたのがわかる。その後、各国中央銀行による流動性供給策等を受けてスプレッドは徐々に縮小に向かったが、依然として金融市場の混乱が高まった時期の水準で推移していた。

 さらにアメリカでは一般の家計が預金代わりとして使っているMMF「マネー・マーケット・ファンド」についてはリーマン・ブラザーズの破綻を受けて一部のファンドが額面割れしたことを受け多くのファンドに対して投資家からの解約が殺到する事態となった。この結果、ファンドによる資産売却やファンドの廃止が相次いだ。そのため、MMFの残高は2008年9月中旬に大幅に減少した。

 MMFからの資金に依存してきたホールセール・バンクの資金調達にも支障を生じさせた。その後、9月19日にアメリカ政府により、MMFの保険プログラムが創設されたことでMMF残高は増加に向かった。CP「コマーシャル・ペーパー」市場についてもMMFからの資金供給に依存していた。その問題もあり9月中旬以降、翌日物等極めて短い期間のCPを除いては新規発行が困難な状態に陥った。

 CP発行残高の推移をみると9月中旬以降、FRBによるCPの直接買取制度が始まる10月下旬まで残高が減少を続けており、この結果、金融機関だけでなく事業会社も資金繰りに窮する状態となった。また、事業会社は長期資金の市場調達についても厳しい状況が続いていた。社債と国債の利回りのスプレッドをみると、とりわけ、格付けの低い社債を中心に、9月中旬以降スプレッドが急速に拡大した。

 10月以降もさらにスプレッドが拡大を続けているのが分かる。事業会社は社債の引受け手を見つけることが困難な状態になっていたそれに加え、発行できてもかなり高いコストを支払うことを余儀なくされた。このようにアメリカの金融市場においては財務状況に対する疑念から、金融機関の間で相互の信頼が失われた状態に陥った。その結果として金融市場における流動性が著しく低下した。

 一方、日本では12月11日社保庁、宙に浮いた約5千万件の年金記録のうち、1975万件が名寄せ困難と発表した。12月17日「ねんきん特別便」発送開始。2008年が明け3月13日に円高となり12年ぶりに1ドル100円を突破した。3月14日には社保庁が年会記録の特定困難2025万件と公表した。
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