第35話 勝機
文字数 2,058文字
「くくくく。こりゃ、見ものですね。
あの魔王エリカ様が、こんなちんちくりんに転生したが為に、魔王の力をほとんど使えずケロちゃんにかじられるとか……はあ、ゾクゾクしてきました……」
「くそったれ! この変態野郎!!」
せめて何か遠距離攻撃で、あの馬鹿テイマーを攻撃出来れば、ケルベロスもおとなしくなるかも知れんのだが……。
「さて。お遊びはそろそろおしまいにしましょう。
ケロちゃん。一思いにガブリとやっちゃってください!
ハリーアップ!!」
なんだと! ここで速度強化だと……だめだ、かわせない!
ケルベロスがエリカに飛び掛かり、次の瞬間、飛んで逃れようとしたエリカの左足を思い切りかみちぎった。
「ぐはーーっ! くそ……左足持ってかれた! ナナ? ナナは大丈夫か!?」
(私は大丈夫。そんなに痛くないから……それよりもエリカ。早く逃げて!
ほんとに食べられちゃう!)
そんな……痛くない訳ねえだろ。あたいだってこんなに痛いんだぜ……。
だが、逃げろって言っても片足じゃ動けねえ。
「はははは。ケロちゃん、いいですよ。そのままなぶり殺しなさい!」
ヴィンセントの命令で、ケルベロスはエリカ向かって突進後、今度は右肩にかみつき、華奢なナナの身体は、あっという間に右腕を持っていかれた。
くそ……痛てえ……
(エリカごめん……私も痛くて……マナ作れない……)
はは、こりゃもうだめか……ナナ。すまん!
エリカも観念したかのように、ナナの身体を地面に横たえる。
ケルベロスが身を翻してエリカに近づき、ゆっくりと頭を口に喰わえ、上に持ち上げると、ぼろ雑巾のようなナナの身体が、ぐったりとその口から下に垂れ下がった。
「ほほほー。なんという至福の瞬間! さあ、ケロちゃん! あと一噛みですよ!
思いきり、その頭を噛み砕きなさい!!」
ヴィンセントの命令で、ケルベロスがゆっくりとあごに力を入れ始め、ナナの頭蓋が、メシッと音を立て始めたが……。
「マグマスラッシュ!!!!」
エリカが昔聞いた、あまり思い出したくない掛け声が響き渡たり、次の瞬間、ケルベロスの頭部が、ナナの頭を咥えたまま、ボトリと下に落ちた。
「はは、すまん魔王。遅くなった……まだ生きてるか?」
「はん……おせーよ……」
「なななな……お前は勇者タイガ。なんでお前が魔王を助ける?
ご隠居様には話を通してあったはずだが? それにそのマナ。一体どこから……」
「あー、お前がババアと何話したかはよく知らんが、お前が今襲ったのは、魔王エリカなんだけど、俺の恋人ナナちゃんでもある。
よっくも、彼女の身体をこんなにボロボロに……よってお前は有罪!!
イラ! ナナちゃんの治療を急げ!!」
「分かったわ。でも油断しないで、ケルベロスの頭は一つじゃないわよ!」
イラストリアが、倒れているナナの身体に駆け寄り、エルフから貰ったマナカプセルを惜しみなく使用して、ナナの身体にヒールを施し始めた。
「お前ら……自分達が何をしてるか分かっているのか!?
私は、エルフ王の要請で来ているのだぞ! お前らのそれは反逆罪だ!
まあ国に帰る前に、ここで処刑だけどな!!」
ヴィンセントが怒りながら詠唱を始めると、首を落とされて突っ伏していたケルベロスがむくりと起き上がり、身体が金色に輝いたかと思うと、いきなり巨大化し、首が二つ現れた。
「ふふっ。マナを節約する為、本形態は隠してあったのだが、もう容赦はせん。
お前らの手持ちのマナは、そのカプセル分だけなのだろう?
それでは絶対、ケロちゃんには勝てん!」
「あっちゃー。なんか敵意むき出しなんだが……。
イラ。ナナちゃんは大丈夫そうか?」
タイガは、イラとナナの盾になるべく、ケルベロスの前に立ちふさがっている。
「うん。ボディの修復はうまくいったと思う。
でも、マナどころか生体エネルギー自体も弱くなってて、一旦逃げた方が……」
「……だめだイラストリア……やつは死体を亜空間経由で追ってくる。
魂の尾が切れたこの身体では逃げ切れん。ここで、決着を付けるしかない……」
途切れそうになる意識をなんとかこらえながら、エリカがイラストリアに言った。
「エリカ……そうは言っても、私達ももう手持ちのマナが無いわ。
一体どうやって……」
「……………」消え入りそうな声で、エリカがイラストリアに何かを伝えた。
「ああもう。結局、それしかないのよね……タイガ、今の聞いてた?」
「ああ、しっかり聞こえたさ。それしか無いならそれで行こうぜ」
そう言いながらタイガとイラストリアは、ケルベロスの方に駆け寄っていった。
「ふっ。なんですか? 特攻とは勇者らしくもない。
それに魔王は……おや? もう事切れている? なんとたわいもない。
これなら、勇者達はあのマナを、自分らの攻撃に回したほうが、生き残れる確率がちょっとは上がったでしょうに……。
まあ、脳筋バカの尊称は伊達ではないという事か……」
そう言いながらヴィンセントは、魔王の死を確認すべく、ナナの身体の方に近づいていった。
あの魔王エリカ様が、こんなちんちくりんに転生したが為に、魔王の力をほとんど使えずケロちゃんにかじられるとか……はあ、ゾクゾクしてきました……」
「くそったれ! この変態野郎!!」
せめて何か遠距離攻撃で、あの馬鹿テイマーを攻撃出来れば、ケルベロスもおとなしくなるかも知れんのだが……。
「さて。お遊びはそろそろおしまいにしましょう。
ケロちゃん。一思いにガブリとやっちゃってください!
ハリーアップ!!」
なんだと! ここで速度強化だと……だめだ、かわせない!
ケルベロスがエリカに飛び掛かり、次の瞬間、飛んで逃れようとしたエリカの左足を思い切りかみちぎった。
「ぐはーーっ! くそ……左足持ってかれた! ナナ? ナナは大丈夫か!?」
(私は大丈夫。そんなに痛くないから……それよりもエリカ。早く逃げて!
ほんとに食べられちゃう!)
そんな……痛くない訳ねえだろ。あたいだってこんなに痛いんだぜ……。
だが、逃げろって言っても片足じゃ動けねえ。
「はははは。ケロちゃん、いいですよ。そのままなぶり殺しなさい!」
ヴィンセントの命令で、ケルベロスはエリカ向かって突進後、今度は右肩にかみつき、華奢なナナの身体は、あっという間に右腕を持っていかれた。
くそ……痛てえ……
(エリカごめん……私も痛くて……マナ作れない……)
はは、こりゃもうだめか……ナナ。すまん!
エリカも観念したかのように、ナナの身体を地面に横たえる。
ケルベロスが身を翻してエリカに近づき、ゆっくりと頭を口に喰わえ、上に持ち上げると、ぼろ雑巾のようなナナの身体が、ぐったりとその口から下に垂れ下がった。
「ほほほー。なんという至福の瞬間! さあ、ケロちゃん! あと一噛みですよ!
思いきり、その頭を噛み砕きなさい!!」
ヴィンセントの命令で、ケルベロスがゆっくりとあごに力を入れ始め、ナナの頭蓋が、メシッと音を立て始めたが……。
「マグマスラッシュ!!!!」
エリカが昔聞いた、あまり思い出したくない掛け声が響き渡たり、次の瞬間、ケルベロスの頭部が、ナナの頭を咥えたまま、ボトリと下に落ちた。
「はは、すまん魔王。遅くなった……まだ生きてるか?」
「はん……おせーよ……」
「なななな……お前は勇者タイガ。なんでお前が魔王を助ける?
ご隠居様には話を通してあったはずだが? それにそのマナ。一体どこから……」
「あー、お前がババアと何話したかはよく知らんが、お前が今襲ったのは、魔王エリカなんだけど、俺の恋人ナナちゃんでもある。
よっくも、彼女の身体をこんなにボロボロに……よってお前は有罪!!
イラ! ナナちゃんの治療を急げ!!」
「分かったわ。でも油断しないで、ケルベロスの頭は一つじゃないわよ!」
イラストリアが、倒れているナナの身体に駆け寄り、エルフから貰ったマナカプセルを惜しみなく使用して、ナナの身体にヒールを施し始めた。
「お前ら……自分達が何をしてるか分かっているのか!?
私は、エルフ王の要請で来ているのだぞ! お前らのそれは反逆罪だ!
まあ国に帰る前に、ここで処刑だけどな!!」
ヴィンセントが怒りながら詠唱を始めると、首を落とされて突っ伏していたケルベロスがむくりと起き上がり、身体が金色に輝いたかと思うと、いきなり巨大化し、首が二つ現れた。
「ふふっ。マナを節約する為、本形態は隠してあったのだが、もう容赦はせん。
お前らの手持ちのマナは、そのカプセル分だけなのだろう?
それでは絶対、ケロちゃんには勝てん!」
「あっちゃー。なんか敵意むき出しなんだが……。
イラ。ナナちゃんは大丈夫そうか?」
タイガは、イラとナナの盾になるべく、ケルベロスの前に立ちふさがっている。
「うん。ボディの修復はうまくいったと思う。
でも、マナどころか生体エネルギー自体も弱くなってて、一旦逃げた方が……」
「……だめだイラストリア……やつは死体を亜空間経由で追ってくる。
魂の尾が切れたこの身体では逃げ切れん。ここで、決着を付けるしかない……」
途切れそうになる意識をなんとかこらえながら、エリカがイラストリアに言った。
「エリカ……そうは言っても、私達ももう手持ちのマナが無いわ。
一体どうやって……」
「……………」消え入りそうな声で、エリカがイラストリアに何かを伝えた。
「ああもう。結局、それしかないのよね……タイガ、今の聞いてた?」
「ああ、しっかり聞こえたさ。それしか無いならそれで行こうぜ」
そう言いながらタイガとイラストリアは、ケルベロスの方に駆け寄っていった。
「ふっ。なんですか? 特攻とは勇者らしくもない。
それに魔王は……おや? もう事切れている? なんとたわいもない。
これなら、勇者達はあのマナを、自分らの攻撃に回したほうが、生き残れる確率がちょっとは上がったでしょうに……。
まあ、脳筋バカの尊称は伊達ではないという事か……」
そう言いながらヴィンセントは、魔王の死を確認すべく、ナナの身体の方に近づいていった。