文字数 725文字

目を開けると、すべてが いるようでした。
光に目が焼き付けられるようで、たまに目を閉じてしまいたくなります。
わたしにとってはあくまで部品だったものが、目を通して一つの接続した形となりました
竜胆の目は薄い青
はじめてみた空と同じ色でした
息をするのも忘れ竜胆の顔に見入りました。
どうしてこんなにも目が離せないのでしょうか。
「りんどうはほんとうにきれいね。」
竜胆は何もいはず私を見つめました。
「お嬢様のほうが、ずっと、ずっとお綺麗ですよ。」

彼は骨ばっていて、直線が地面刺さってしまったいたかのようにずっと動きませんでした。
空を見上げているかれは透けているようでした。
今まで美醜などは気にも留めていませんでした。
わたしは美しさも知らなければ、醜さも知らなかったのです。

彼をおいて、わたしは中に戻りました。わたしの足、やけに青白く細い足が、床を弱く跳ね返しています。
戸を引きかけると、部屋にこちらに向かって置かれた微かにひかるガラス面があるのに気づきました。
見たことのないものがうつっていました。
「え?」
落花が泥濘に沈み込み、その透きとるような彩度をどろどろと穢している。
胸中に細いガラスの管を刺し、そこから冷水を流し込まれるような冷えと痛みが広がりました。
まだ見頃であった落花が地面の泥濘みに侵食され、透明な彩度と濁った厚みがどろどろと混ざり合うあの情景が思い起こされ、わたしは鈍く悲鳴をあげました。すると、ガラス面の中の顔がみるみる歪んでいきました。

「汚らわしい」
脊椎からそう思いました

吐き気そうしようもない嫌悪感
みるにたえず絶望虚しさ
全て間違っていた
これが私という人間なのでしょうか。
これが、私、なのでしょうか



これが私なのですね


わたしは、鏡を叩き割りました。






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