終わりの沈黙
文字数 440文字
──終わったのか……。
赤い雨が降り。逃げ場をなくした断末魔がなり病むことなく響き続け。肉を斬り。骨を断ち。命という命が死の交響詩を奏で続けた戦場。
さっき笑顔を見せていた兵士の抜け殻は何を最後に見たのか、閉じることなく一点を見つめていた。
伴奏を終え残った沈黙。拓けた視界。きっとこの世界には神など居ないのだろう。そう思った瞬間だった。
死屍累々の大河、頭上を鴉の鳴き声が第二曲を奏でながら黒い羽を羽ばたかせ舞う。
それは天使なんて居ない。と訴えかけているようにも見え、禍々しく恐ろしい。
降り立ったソレは慈悲もなく、死体を……仏を、容赦なく柔らかい部分を突っつき抉り貪る。
目を背けようにも三百六十度に広がる光景。空には暗雲の如く黒い翼が舞い続けた。
自分の罪の重さを感じ。汚れ一つ無い自分の綺麗な手のひらを黒い瞳で写す。
この戦場で場違いな程に綺麗な手のひらを──。
「それでも……俺は……ッ!」
赤く滲む程に握り潰し、あの日誓った事を思い出す。それは信長が信長になる為に誓ったあの日の記憶……。