織田信長の危機
文字数 3,446文字
──殺しちゃたじゃねぇよ。
いや、実にまずいことになってしまった。
何がマズイって、そりゃあエセ魔術などをスマホを通して使えなくなっちまったって事だ。
その場しのぎの言い訳がアーサーの指圧より圧迫死とか笑えない冗談だよ。
いや、どーしよ。どーする??
「あのっ、大丈夫ですか??」
自問自答をしていると、マーリンが憂いた様子を浮かべる。どうやら、俺の表情はそこまで酷いものだったらしい。
隙間から吹き抜ける風が『哀れ』だと慰めんばかりに俺の頭を優しく撫で抜けてゆく。そんな中、目の前にいるがさつな女!! いや、アーサーは結いたポニーテールを、さながら歩く馬のように揺らしながら左右を見渡す。
そりゃ、そーだ。この気まずい空間もとい沈黙を作ったのは貴女なんだから。
アーサーは、頭を“ポリポリ”と掻きながら『まずったなー』と言う表情をわかり易く作ると最終的に俺を見る。
しかし、『まずったなー』て言う表情を作る王様ってのも新鮮だよな。普通ならば、『こんな脆いものが信用なるか』とか逆ギレしそうな勢いだけど。そこは、流石円卓会議なのか。皆が対等と言うのは満更でもないらしい。
「まぁ、仕方ねぇーか! 壊れちまったもんしゃーねぇな!」
──コッの王!!
どうやら、反省はしていなかったらしい。例えしていたとしても切り替えが早すぎんだよ。ビックリだよっ!
「アーサー! その前に言わなくてはイケナイ事があるでしょっ!?」
騎士の中の騎士ランスロット様。貴女は何て優しいお方なんだ。いや、ちょっとまてよ。
ランスロットも女でアーサーも女?
「ランちゃんは細かいんだからー」
こりゃあ、どうなるんだ? 俺の知る歴史じゃあ、アーサー王の妃を寝とるのがランスロット。そして、それが争いに発展する訳だが……。
「ですから、ランちゃんと呼ぶのをやめなさい!!」
今時点で争ってるよーなものだし……。あ、でもグィネヴィアは男性なのか。と、なるとグィネヴィアとアーサーが結婚して……。
いやしかし、意外とみたくないものだ。アーサーも何気に美人なんだよな。
そりゃあーイケメンとお似合いだけどさ?
「もー、細かいんだからランちゃんッ!」
「ちょ! アーサー! 抱きつかないでくださいッ!! マーリンも何か言ってちょうだいよ!!」
「ランスロット……。貴女は私の妹の弟子。諦めてください」
つー事は、やはりでも、性別は違えど歴史通りに進むんだとしたら二人は泥沼の恋愛激に……。
「もー、分かったよー。責任はとるよ……。仕方ねーなあ」
でも、俺が呼ばれた理由はなんだ? まだ婚約もしていないんじゃ、
「おい、信長」
争いの時までだいぶ時間もあるだろうし、
「おいって!! 聞いてんのかッ!!」
「うわっ!! 痛てぇ! 蹴っ飛ばすなよ!! しかも脛『すね』だぞ! 弁慶すら泣いた場所だぞ!!」
「弁慶? 誰だそりゃ。それよりも、お前が、俺の話を聞かねーでしけた面してっからだろ!?」
涙目のせいか、ぼやけて見えるアーサーは反省どころか、腕を組み吹っ切れたような清々しい態度でしゃがむ俺を見下ろしていた。
助けを求めたのか、反応的にランスロットを見ると頭を抱え項垂れた様子。おてんば娘に振り回されるなんて話は珍しくはない。
──お気の毒に……。
「それで!! だ。その、なんだ? お前は、皆が騒いでいた奴にはなれねぇのか??」
「そりゃあー……そ」
いや、いやまてよ。もしここで俺が“成れない”と括ってしまったら。それこそ、グィネヴィアのように『じゃあ騎士じゃねぇなら此処に』とか言いかねないし。皆も賛同する確率がある。まあ、この場合はアーサーのミスでもあり、この雰囲気から考えるにマーリンが責められる事はないだろう。
しかし、しかーし! 俺はどうなる?? もしここ追い出されたら? 路頭に迷うよな。
暮らしていける自信なんかない。
「んな訳がないだろう……。あれは追憶の行き着きし場所よ。俺は何度でも覚醒する。まあ、それには鍛錬と時間を要するがな?」
決まった。この訳あり感をだせば、じゃあ『鍛錬をするしかない』だの修行を促すに違いない。そうすれば、俺も強くなれて、何も言われずに居れる。まさに一石二鳥!
「そうか? なら仕方ねぇ。キャメロットには鍛錬所が幾つかある。そこで感を呼び戻すんだな」
アーサーは頭を掻きながら頷く。
ほらな! さすが俺だよ。いやあ、ここに讃賞してくれる人が居ないから自画自賛になっちゃうけどさ。
「でもなんだ? もし、お前が、その頃に戻れねぇって話だったんなら、“客人”として持て成すか“元の国”に帰してたんだが……。良かったよ、こっちとしちゃ“神徒”に帰られたんじゃーよ?? まあ、よろしく頼むわ」
な……んだ……と。
完璧にルートを間違えただと……。つか、なんで強くなる事を今望んだ? 完璧に“騎士”のオーラに流されていたのを今になって気がつく。
そう、俺も、あの無双ゲームの“織田信長”に憧れていた時期もあった。と言うか、カッコよすぎるでしょ。俺も言いたい『ういやつよの』
アーサーは、虫の居所が悪いのか若干視点を外しながら俺の方を見て手を伸ばす。
──黙っていれば綺麗だと本当に思う。黙っていれば。
俺はランスロットの時と同様に手を取った。
「アーサー! 俺は反対だ。そんな力無き者を」
「うっせぇな!! 黙ってろ芋野郎」
──こわっ。いや怖いし痛いから。
俺の手を握り潰しながら、グィネヴィアを睨み怒鳴る。歯をむきだし、舌打ちをしてそうな態度を取り、席につく。
そりゃあ、渋い顔をしますよね、グィネヴィアさん。
と言うか、この仲の悪さはなんなんだろうか。
「悪かったな。アイツの言う事は気にする事ねぇから」
そ、そうなのか? なら、あの未だに睨んでくるんで、それ何とかしてくれませんか。怖いんですよ。
アーサーが、自分の席に就くとランスロットもまた、アーサーの隣の席に就く。
俺はマーリンに連れられて円卓に向かった。
その円卓と言うのは扉を見た後だからだろうか、逆に違和感を感じる。
真っ白い卓の中央には花瓶があり、各々の場所には金色の杯に赤いお酒のようなものが注がれている。ワインだろうか?
けれど、此処が神聖な場所だと言うのは岩を彫り出来たキリストや聖母マリアの彫刻。その祭壇に供えられている物分かる。
「あー、席ねぇから、信長はマーリンと半分な?」
「へ?」
「分かりました。アーサー王」
いや、忠義がすげぇな! ランスロット見たいにグイグイ言えば良いだろ。
つか、だって密着が半端なくなるだろーが。
なんて、俺も苦言を呈すことも出来ず狭ぜまとコジンマリ席に付く。
「そーや、自己紹介……ぁあ、またでイイな? 時間食ったし。とりあえず、このナヨナヨした男が“ガヴェイン”で兄貴はログレスの見回りで居ないからー」
いやいや、彼がナヨナヨした? 何処がだよ! 筋骨隆々じゃねーか。恐れを知らな過ぎだろ!
それにガヴェインって言ったらアーサーの甥っ子とかじゃなかったっけ?
本当にこの時代はゴチャゴチャしている。と言うか、種違いの兄弟が多すぎんだよ!!
でも、どうやらアーサーの口ぶりからするにガヴェインは血縁関係にはいないらしい。
「どーもねっ!!」
お、何だろう。この接し易い感じ。
仲良く出来そうな感じがするぞ。顔つきも少しタレ目で優しそうだし。ガタイを見なければ怖くわない。ガタイを見たから少し怖い。
「んじゃあ、まあ話を始めるか?? 今日は、見回りもあり、多少人数は少くねーけど。使い魔は居るようだし」
「使い魔!?」
なにそれ、カッコイイ
「なんだ、信長は使い魔を知らねぇのか? 使い魔は来れないやつの代わりに伝言役……つーか、ソイツの耳や目を通して情報を取得すんだよ。マーリンの付き人だって、使い魔……いや、マーリンの場合は少し違うか」
そう言いながら指を指すと、様々な動物が数匹居た。鳩や猫。気にもしていなかったが、そう聞くと物凄い気になる。
──欲しい。
「んじゃ、まあーそーゆことで始めるか。サクソン人もとい白い龍を撃滅する為に」
いや、実にまずいことになってしまった。
何がマズイって、そりゃあエセ魔術などをスマホを通して使えなくなっちまったって事だ。
その場しのぎの言い訳がアーサーの指圧より圧迫死とか笑えない冗談だよ。
いや、どーしよ。どーする??
「あのっ、大丈夫ですか??」
自問自答をしていると、マーリンが憂いた様子を浮かべる。どうやら、俺の表情はそこまで酷いものだったらしい。
隙間から吹き抜ける風が『哀れ』だと慰めんばかりに俺の頭を優しく撫で抜けてゆく。そんな中、目の前にいるがさつな女!! いや、アーサーは結いたポニーテールを、さながら歩く馬のように揺らしながら左右を見渡す。
そりゃ、そーだ。この気まずい空間もとい沈黙を作ったのは貴女なんだから。
アーサーは、頭を“ポリポリ”と掻きながら『まずったなー』と言う表情をわかり易く作ると最終的に俺を見る。
しかし、『まずったなー』て言う表情を作る王様ってのも新鮮だよな。普通ならば、『こんな脆いものが信用なるか』とか逆ギレしそうな勢いだけど。そこは、流石円卓会議なのか。皆が対等と言うのは満更でもないらしい。
「まぁ、仕方ねぇーか! 壊れちまったもんしゃーねぇな!」
──コッの王!!
どうやら、反省はしていなかったらしい。例えしていたとしても切り替えが早すぎんだよ。ビックリだよっ!
「アーサー! その前に言わなくてはイケナイ事があるでしょっ!?」
騎士の中の騎士ランスロット様。貴女は何て優しいお方なんだ。いや、ちょっとまてよ。
ランスロットも女でアーサーも女?
「ランちゃんは細かいんだからー」
こりゃあ、どうなるんだ? 俺の知る歴史じゃあ、アーサー王の妃を寝とるのがランスロット。そして、それが争いに発展する訳だが……。
「ですから、ランちゃんと呼ぶのをやめなさい!!」
今時点で争ってるよーなものだし……。あ、でもグィネヴィアは男性なのか。と、なるとグィネヴィアとアーサーが結婚して……。
いやしかし、意外とみたくないものだ。アーサーも何気に美人なんだよな。
そりゃあーイケメンとお似合いだけどさ?
「もー、細かいんだからランちゃんッ!」
「ちょ! アーサー! 抱きつかないでくださいッ!! マーリンも何か言ってちょうだいよ!!」
「ランスロット……。貴女は私の妹の弟子。諦めてください」
つー事は、やはりでも、性別は違えど歴史通りに進むんだとしたら二人は泥沼の恋愛激に……。
「もー、分かったよー。責任はとるよ……。仕方ねーなあ」
でも、俺が呼ばれた理由はなんだ? まだ婚約もしていないんじゃ、
「おい、信長」
争いの時までだいぶ時間もあるだろうし、
「おいって!! 聞いてんのかッ!!」
「うわっ!! 痛てぇ! 蹴っ飛ばすなよ!! しかも脛『すね』だぞ! 弁慶すら泣いた場所だぞ!!」
「弁慶? 誰だそりゃ。それよりも、お前が、俺の話を聞かねーでしけた面してっからだろ!?」
涙目のせいか、ぼやけて見えるアーサーは反省どころか、腕を組み吹っ切れたような清々しい態度でしゃがむ俺を見下ろしていた。
助けを求めたのか、反応的にランスロットを見ると頭を抱え項垂れた様子。おてんば娘に振り回されるなんて話は珍しくはない。
──お気の毒に……。
「それで!! だ。その、なんだ? お前は、皆が騒いでいた奴にはなれねぇのか??」
「そりゃあー……そ」
いや、いやまてよ。もしここで俺が“成れない”と括ってしまったら。それこそ、グィネヴィアのように『じゃあ騎士じゃねぇなら此処に』とか言いかねないし。皆も賛同する確率がある。まあ、この場合はアーサーのミスでもあり、この雰囲気から考えるにマーリンが責められる事はないだろう。
しかし、しかーし! 俺はどうなる?? もしここ追い出されたら? 路頭に迷うよな。
暮らしていける自信なんかない。
「んな訳がないだろう……。あれは追憶の行き着きし場所よ。俺は何度でも覚醒する。まあ、それには鍛錬と時間を要するがな?」
決まった。この訳あり感をだせば、じゃあ『鍛錬をするしかない』だの修行を促すに違いない。そうすれば、俺も強くなれて、何も言われずに居れる。まさに一石二鳥!
「そうか? なら仕方ねぇ。キャメロットには鍛錬所が幾つかある。そこで感を呼び戻すんだな」
アーサーは頭を掻きながら頷く。
ほらな! さすが俺だよ。いやあ、ここに讃賞してくれる人が居ないから自画自賛になっちゃうけどさ。
「でもなんだ? もし、お前が、その頃に戻れねぇって話だったんなら、“客人”として持て成すか“元の国”に帰してたんだが……。良かったよ、こっちとしちゃ“神徒”に帰られたんじゃーよ?? まあ、よろしく頼むわ」
な……んだ……と。
完璧にルートを間違えただと……。つか、なんで強くなる事を今望んだ? 完璧に“騎士”のオーラに流されていたのを今になって気がつく。
そう、俺も、あの無双ゲームの“織田信長”に憧れていた時期もあった。と言うか、カッコよすぎるでしょ。俺も言いたい『ういやつよの』
アーサーは、虫の居所が悪いのか若干視点を外しながら俺の方を見て手を伸ばす。
──黙っていれば綺麗だと本当に思う。黙っていれば。
俺はランスロットの時と同様に手を取った。
「アーサー! 俺は反対だ。そんな力無き者を」
「うっせぇな!! 黙ってろ芋野郎」
──こわっ。いや怖いし痛いから。
俺の手を握り潰しながら、グィネヴィアを睨み怒鳴る。歯をむきだし、舌打ちをしてそうな態度を取り、席につく。
そりゃあ、渋い顔をしますよね、グィネヴィアさん。
と言うか、この仲の悪さはなんなんだろうか。
「悪かったな。アイツの言う事は気にする事ねぇから」
そ、そうなのか? なら、あの未だに睨んでくるんで、それ何とかしてくれませんか。怖いんですよ。
アーサーが、自分の席に就くとランスロットもまた、アーサーの隣の席に就く。
俺はマーリンに連れられて円卓に向かった。
その円卓と言うのは扉を見た後だからだろうか、逆に違和感を感じる。
真っ白い卓の中央には花瓶があり、各々の場所には金色の杯に赤いお酒のようなものが注がれている。ワインだろうか?
けれど、此処が神聖な場所だと言うのは岩を彫り出来たキリストや聖母マリアの彫刻。その祭壇に供えられている物分かる。
「あー、席ねぇから、信長はマーリンと半分な?」
「へ?」
「分かりました。アーサー王」
いや、忠義がすげぇな! ランスロット見たいにグイグイ言えば良いだろ。
つか、だって密着が半端なくなるだろーが。
なんて、俺も苦言を呈すことも出来ず狭ぜまとコジンマリ席に付く。
「そーや、自己紹介……ぁあ、またでイイな? 時間食ったし。とりあえず、このナヨナヨした男が“ガヴェイン”で兄貴はログレスの見回りで居ないからー」
いやいや、彼がナヨナヨした? 何処がだよ! 筋骨隆々じゃねーか。恐れを知らな過ぎだろ!
それにガヴェインって言ったらアーサーの甥っ子とかじゃなかったっけ?
本当にこの時代はゴチャゴチャしている。と言うか、種違いの兄弟が多すぎんだよ!!
でも、どうやらアーサーの口ぶりからするにガヴェインは血縁関係にはいないらしい。
「どーもねっ!!」
お、何だろう。この接し易い感じ。
仲良く出来そうな感じがするぞ。顔つきも少しタレ目で優しそうだし。ガタイを見なければ怖くわない。ガタイを見たから少し怖い。
「んじゃあ、まあ話を始めるか?? 今日は、見回りもあり、多少人数は少くねーけど。使い魔は居るようだし」
「使い魔!?」
なにそれ、カッコイイ
「なんだ、信長は使い魔を知らねぇのか? 使い魔は来れないやつの代わりに伝言役……つーか、ソイツの耳や目を通して情報を取得すんだよ。マーリンの付き人だって、使い魔……いや、マーリンの場合は少し違うか」
そう言いながら指を指すと、様々な動物が数匹居た。鳩や猫。気にもしていなかったが、そう聞くと物凄い気になる。
──欲しい。
「んじゃ、まあーそーゆことで始めるか。サクソン人もとい白い龍を撃滅する為に」