第5話:おおみそかはお休み、元日はお仕事

文字数 1,126文字

 うちの訪問看護ステーションは日曜は休みで、それ以外は祝日であっても営業日。これは年末年始でも変わらない。と言ってもお客様の方でお正月だから来なくていいということは多い。だから、勤務はわりと楽。お正月に働いてる人は多いしね。
 制度上訪問看護は週三回が上限で、その回数はお客様とステーションの間で話し合って決める。ぶどうさんの場合は週二回になっている。
「あけましておめでとうございます」
「あけましておめでとうごさいます。ってお正月なのにお仕事ご苦労様です」
「いえいえ、早々にお目に掛かれてうれしいです」
「うれしいこと言ってくれるなぁ。でも、お年玉はありませんよ」
「わかってます」
「帰省はしないの?」
 あたしが秋田の出身だということは前に言ってある。
「今年はしないです。二年に一回くらいでいいんです」
「ありがたみがあるのかな。それとも結婚しろってうるさいとか」
「まあ、そんなところです」
「お正月と言うと、なまはげだよね。おおみそかだったか」
「あたしは秋田市なんで残念ながら来ないです」
「言われるでしょ」
「言われますね。フィンランドの人はサンタクロースに言伝てしてって言われるでしょうね」
「フィンランド人ってコッコネンとかアホネンとかネンがつく名前が多いんだよね」
「ソウヤネンとかチャイマンネンとかですか」
 微妙な顔をしてる。
「あ、すみませんでした」
 あたしの関西弁は変なんだろう。

「お正月と言うとお雑煮だよね」
「そうですね。うちは四角い餅に鶏肉と青菜、すまし仕立てですね」
「東京のお雑煮とあんまり変わらないね。意外だ」
「関西は丸餅に白味噌仕立てって聞いたことあります」
「うちの実家は元日はすまし仕立て、二日は白味噌ってハイブリッドなことやってた」
「そういうおうちもあるんですね」
「でも、お餅は丸だけ。元妻の実家で雑煮の中に角餅が入ってるの見てギョッとした」
 ぶどうさんには離婚歴がある。これもなかなか壮絶な話なんで、お正月から話題にするのはやめよう。
「そんなに変ですか」
「鏡餅が四角かったらどうする?」
「それは嫌ですね」

「お正月と言うとおせちだよね」
「何が好きですか?」
「数の子と黒豆と千枚漬け、かな」
「オーソドックスですね」
「地味だけど、おせちは本来そういうもんです。みかんさんは?」
「伊勢海老とか鯛でしょうか」
「食べにくいじゃん」
 子どもかっ!
「鍋とかもしますね」
「鍋もおせちですって、ちゃんこじゃないんだから」
「ちょっと何言ってるのかわかんないです」
「相撲部屋で作る料理は全部ちゃんこなんだって。その代表がちゃんこ鍋」
「なるほど。手作りチョコもちゃんこなんですね」
「みかんさん、すっかりぼくの相方っぽくなってきたね」
「本年もよろしくお願いいたします」




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