第7話:性癖聞いてもいいですか?

文字数 1,100文字

「ぶどうさんってどういう子どもだったんですか?」
「子どもって言っても幅があるじゃない。小1から中3まで何回も蝶みたいに変態してると思わない?」
「確かに。オトナになるって変化が遅くなることだと思います」
「みかんさんは小学生の頃は、どういう子どもだったの?」
「そうですねー。ぼんやりした子でした」
「それは親とか同級生の印象でしょ。自分ではどう思ってたの?」
「どうなんでしょ。ぼんやりした記憶しかないので」
「すみませんでした。言われてみればぼくもいくつかの断片以外はぼんやりしてますね」
「いくつかの断片ですか」
「何枚かの写真しか残ってない感じ。何かあるとそれを引っ張り出す」
「実際の写真は残ってないんですか?」
「うん。きついイベントがあると断層が生まれるんだよね」
 昔のアルバムがあったとしても、前の奥さんは渡すような人じゃなさそう。
「昔の写真って記憶を固定しちゃうところがありますね」

 冬の陽や写真の人のかすれ声

「写真の人って付き合ってた人のことですよね。いつ頃?」
「ぼくの恋愛臭のする俳句はほぼフィクションだから。モテなかったから捏造してるわけで」
「悲しいですね。まあ、運動神経が良ければ女子に人気ありますからね」
 ぶどうさんが運動音痴なのは聞かされていた。めちゃくちゃ不器用なんで鉄棒とかまるでダメだったとか。
「オトナになってからは非モテから脱出できたんだけど、手遅れだよ」
「手遅れって、どうしてですか?」
「だっていちばん、そういう時期にモテないと歪むよ」
「中学生の頃に性癖が歪んだんですね」
「いきなりずばっと来るね。正解ですが」
「どういう方向に歪んだんですか?」
「最初はフェチだね。谷崎潤一郎のせいかも。初期はいろんな変態が描かれてるんだけど、だんだん足フェチに収斂したみたい」
「今度読んでみます」
「彼は友だちと奥さんを交換したりと実践もしてて、立派です」
「はあ」
「みかんさんは性癖ないの?」
「ありますよ。人に言えないだけで」
「なんかそそられるね。一口に人に言えない性癖と言っても、お尻のにおいを嗅ぐから始まってやばいこと期待するまで、いろいろありそうだけど」
「勘弁してください」
 羞恥責めはやばい。
「自慢じゃないけど、大抵の性癖はお試しした気がする。その上で合う合わないの判断をしてきたし、年を取って許容範囲も広がったみたい」
「と言いますと?」
「ネトラレの妙味はごく最近になってわかったね」
「えっと、妄想ですよね?」
「そうだよ。カネも道具も要らないゲーム」

 長き夜も妄想誘う布団かな

「あの性癖の話、またの機会に続けません?」
「次回の訪問時に?」
「すぐでなくてもいいんですが」
「委細承知しました」





 
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