第11話 穏やかな日々

文字数 733文字

雲がゆっくりと流れていく。
ラルフは再び授業での日々を思い出した。

「ヨハネは天使族と人族を創った後、人族の王を選定された。それが現代まで続くコナー家であり、現在のコナー王朝である。そして、コナー家は五等爵の公、候、伯、子、男を設置し、貴族制を用いた」

ラルフを除いて、ここに集う貴族たちはこの中の子爵、男爵の子息に該当する。伯爵以上では大抵、専属の家庭教師をつけ教養を学ぶ。

貴族といえど、子爵以下ではいつでも贅沢ができるとは限らなかった。
彼らの金銭は自身の土地から取り立てた年貢に依存しており、農作が不況であると、一平民と対して変わらない生活水準になってしまう。

ゆえに、国の作った学校で彼らは学んでいる。

「ヨハネは天使族の代表としてノエル家を選定した。しかし、ノエル家は別段、権力は持っていなかった。ノエル家は単にヨハネの意見を代表して伺う役目しか持たない。その理由として、天使族は未熟ではないことが挙げられる。また、彼らは人族の持つ負の感情を持たない。
だから天使族に先導者は必要なく、今も彼ら天使族は民主制を用いている」

ラルフはキャシーとイヴのことを考えた。
彼らは人族の持つ負の感情を持たない…。
キャスもイヴも怒る時は怒るし、まるで人間みたいだぞ。
ラルフはグノーシス文書(もんじょ)が本当に正しいのか確信が持てなくなっていた。

だが12歳のラルフには疑いを抱き続けることはできなかった。なんせ、まだ12歳なのだから。
偉大な聖典、グノーシス文書を疑うなんて…。

今天秤にかけられた。真偽の天秤だ。
すぐに決した。比べるべくもなく、「信じる」の方が重かった。

「これまでの話した事を確認しようか。まず、神、ヨハネ、審判を行うヘクター、コナー家、ノエル家、そして少し踏み込んでいくと5家の……」


ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み