第13話 ナイトハイト=エーベルバッハ

文字数 953文字

それから一週間がたった。

神学も基礎的な話があらかた済んで今は聖典の細かなエピソードに入っていた。

ラルフは学校に来るのが楽しくなった。神学しか授業を受けていないため、週に2度しか学校に来ることはないが、学校ではいつもナイトハイトと一緒に行動した。

他の貴族とすれ違う時、彼らは少しぎょっとした表情をするが、ナイトハイトは全く気にしていないようだった。彼はいつもラルフの知らない話をしてくれた。今日農民が畑仕事をさぼっているのを見かけただとか、王直属の騎士の槍がいかにかっこよかったかだとか…

ラルフは少し羨ましさを感じたが、それよりも一緒に話せる友達がいると言う事実に満足していた。


「よう、ナイツ。お前何してんだ?貧民とつるんで」

血管が縮こまる。ガーリンソンとグラナスだ。ラルフは戦闘モードに入った。こいつらはどうしても僕をほっといちゃくれないらしい。

「何って、ラルフと話しているんだ」

ナイトハイトの様子がおかしかった。彼のいつもの陽気さが失われていた。今は本当にお嬢様のようになってしまっている。

「だから何でゴミと話してるんだって聞いてんだよ」

一瞬ナイトハイトは牙を剥きかける。がすぐに草食動物に戻った。

怯えてる。ナイツはガーリンソンやグラナスに怯えている。ラルフは自分が馬鹿にされていることなどどうでも良かった。それよりも今はナイツがいじめられていることが気に食わなかった。

何も言えないでいるナイトハイトに代わってラルフは言う。

「俺とナイツが一緒に話していたらどうだって言うんだ?お前たちに関係があるのか?」

「ああ、ある。ナイツは腐っても貴族だ。ナイツが貧民のゴミと話すことは、貴族の格を下げる事を意味する。同じ貴族としてそれは見過ごせないんだよ。貴族の沽券に関わるからな。
ついでに、ナイトハイトのことをきやすく'ナイツ'なんて呼んでんじゃねえよ、格が違うんだよ」

「…」
至極真っ当な事を言いやがる。ラルフは言葉が詰まってしまった。

この時代にあっては確かにラルフがナイトハイトと気軽に話せているこの状況は確かに異常であった。

ラルフが言い返す言葉がないか必死で頭を回転させていたちょうどその時。

「貴族貴族って、君は本当に貴族が好きなんだね」

ラルフは驚いた。ナイトハイトが怯えながらもガーリンソンに牙を剥いている。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み