第14話

文字数 979文字

ナイトハイトは揺れていた。ありとあらゆる感情が瞬時にして湧き上がってきた。それらは浮かんでは消え、浮かんでは消えを繰り返す。後悔。自己肯定。恐怖。怒り…
太陽が昇り、太陽が沈むのと同じように、ある感情が出てきたかと思えば、また別の感情がそれを押し除けて出てくる。

隣にはラルフがいる。だから、最後は勇気が勝った。

「いい加減、貴族で一括りにするのはやめたらどうだい。自分は自分、他人(ひと)は他人。それでいいじゃないか。どうして君が僕のケツまで拭こうとする必要があるんだ?」

言ってやったぞ。そして、僕にはラルフがいるんだ。ガーランに勇敢に挑んでみせたラルフが。
やった、やってやった!

ナイトハイトは自分のことで精一杯で気づく余地すらなかったが、この時この言葉に感銘を受けたものが3人いた。

1人はラルフ。

もう1人は、またまた通りかかって様子を窺っていたエミリア。

最後の1人がグラナスだ。

彼、彼女らはナイトハイトの考え方の奇抜さに何かを見た。

ナイツは今まさに階級制を否定したのだ。





そして、それが意味するのは、王政の否定と、それをもたらした神、ヨハネの否定だと気づけたのは3人のうちの1人。

ヨハネは僕たち人族を未熟だと捉えた。だから王政と階級制を用いた。ならばなぜ最初から天使族のように人族を創ってくれなかったのか?

…よそう、考えてもわからないさ。そもそも神学なんて本当かどうかも怪しいのだから。

彼は神学を、神の存在を疑うという先進的な考えを持っていた。彼は周りの神信仰に自分も侵されながらも、それを疑問視できる珍しい少年だった。





ガーリンソンはすぐに反論する言葉を思いついていたが、そんなことよりナイトハイトの言い方が気に入らなかった。

どうして君が僕のケツまで拭こうとする必要があるんだ?

ガーリンソンはまっすぐナイトハイトを見据えたまま、怒りに震えていた。だが少し楽しそうでもあった。それはまるで火山噴火の予兆を表しているかのようだった。噴火前に訪れる不気味な静けさ。沸々と怒りが湧き立っているものの、それが噴火することはない。ただいつもよりマグマの位置が高いだけだ。

お前は弱虫なんだよ。
ガーリンソンは目の前の怯えた小動物を見てほくそ笑んだ。頑張って虚勢を張っても足が震えているぞ?

どういたぶってやろうかと彼は考えた。まずは徹底的に。

彼はライオンよりも恐ろしい少年だ。








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