第14話 衝突

文字数 759文字

ガーリンソンは話し始めた。

「お前1人がそんなこと思っていても、俺やそのほか多くの貴族は、ほかの貴族の問題は自分も含めた貴族全体の問題だと考える。この考えは曲げない。なぜだかわかるか?それが社会だからだ。
他人(ひと)は他人?笑わせるな。お前の考えは理想論に過ぎないんだよ。他の貴族がへまをしでかしたら、貴族全体の格が下がる。この繋がりはきれない。社会のルールだからだ。そして俺たちは連帯責任から逃れられない。これが現実なんだよ。
ガキが」

グラナスは改めてガーリンソンの気高さを好ましく感じた。彼は後を引き継いだ。
「パンとリンゴだけじゃなく、美味しいお肉が食べたいよ、って頼んでもどうにもならないみたいにな」とグラナスはラルフを見て言った。

ラルフは言い返すことができなかった。それは怒るより先に絶望が襲ってきたからだ。いや、実際には衝動的に怒りが込み上げてきたが、それを一瞬にして絶望が飲み込んだ。ラルフは体全体を覆うほどの黒いベールに包まれていた。体を柔らかく包むそのベールは外界を完全に遮断する。音も聞こえず、何も見えない。目を開ければ、ただの闇が広がっていた。

そうさ、僕は贅沢が許されないんだ…

何でこんなとこ来てんだろ?ラルフはキャシーと母を想った。神話を学ぶのは楽しいけど、こんな辛い目に遭うんならもう学校なんて来ないほうがいいんじゃないか。
長らく会っていないイヴ、半年前から会っていないキャシー。仕事ってなんだよ。ラルフは思った。こんなに辛い目にあってまでキャシーの頼み事を聞く必要なんてないじゃないか。何が友達だ。友達なら仕事を断って僕に神学を教えてくれよ。それかもっと早く、時間がある時に神学を教えておいてくれよ。
なんて惨めなんだ、とラルフは思った。

ふと絶望の淵から意識を戻すと、ナイトハイトがグラナスに殴られていた。
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