第8話 ソフィアルーカス

文字数 568文字

授業を受け出してから後少しで3ヶ月となる。ラルフは3ヶ月で授業に出るのをやめなければならないことに少し寂しさを感じていた。

だがそれも仕方ない。
ルーカス家にとっては3ヶ月が限界だった。
母さんは最初からそうだ。僕が何か欲しいとねだった時はいつでもそれを受け入れてくれたんだ。

「ねえ、母さん、僕新しい靴が欲しいよ」
「いいよ、でももうちょっと待っててね」

それからラルフはすぐに気づいた。母のスープがほんのちょっと少なくなっていると。
そういう日もある。はじめはそう思った。
だが違った。毎日、量がほんのわずかに少ない。貧しいがゆえに、ラルフはわずかな量の変化にも気づけた。

ねえ、僕のだって減らしていいんだよ。ラルフは言わなかった。
言ってしまえば、母さんが、僕に悟らせまいとしている隠れた努力が無駄になる。
言ってしまえば、母さんはそれを誤魔化そうとする。

言ってしまえば、余計母さんに負担を背負わせてしまう…





数ヶ月が経ち、母、ソフィア=ルーカスは息子に新品の靴をプレゼントした。
「ラルフ、遅くなってごめんね」
「ううん、ありがとう!これかっこいいね!」


数週間前、キャシーとイブがくれた靴は川に流し捨てた。

「君、靴ぼろぼろだからさ、はい、新品の靴あげるよ」

金にしようとは思わなかった。母さんを裏切る気がして。


それ以来、ラルフは駄々をこねるのをやめた。






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