52、フィリップ4世(3)

文字数 986文字

 フィリップ4世はボニファティウス8世と激しく対立し、ギョーム・ド・ノガレに命じて教皇を捕縛しようとした。そして教皇は憤死し、フィリップ4世はフランス人のクレメンス5世を擁立して、教皇庁をアヴィニョンに移した。

「教皇庁がアヴィニョンにあった時、教皇はフランス出身の者で占められていたわ。そして1377年、グレゴリウス11世がついにローマに戻ったの。イングランドとの戦争でアヴィニョン周辺も危険になったことやドミニコ会、シエナのカタリナが熱心に訴えたことで教皇も決心したの」
「でもそのことが、教会大分裂が起きるきっかけになりました」
「グレゴリウス11世が亡くなった後、ローマの人々はイタリア人の教皇を強く望んだわ。そしてウルバヌス6世が教皇に選ばれたけど、彼はあまり評判がよくなかった。それに反発したフランス人の枢機卿が新しくロベール枢機卿をクレメンス7世に選出、同じ時に2人の教皇がいるという教会大分裂の時代になったのよ」
「クレメンス7世は弟のピエールを15歳の時にメス司教に叙階し、同じ年に助祭枢機卿にも任命しました」
「ジャンヌ、あなたの弟ピエールはクレメンス7世から信頼されていたのね」
「聖職者の間だけではありません。ピエールは町の人々からも愛され、尊敬を集めていました。それなのに、アヴィニョンで教皇に仕えていた時に、突然亡くなりました。18歳の誕生日の少し前でした」
「若くて優秀な枢機卿が突然亡くなった・・・暗殺の可能性が高いわね」
「私もそう思います。だからこそ独身を通し、イザボー王妃様の侍女になって宮廷に入る決意をしました」
「あなたの役に立つ情報を教えてあげるわ。だからあなたもイザボー王妃様の様子をよく観察して、何かあったら私に教えて欲しいの」
「ヨランド様・・・」
「幼いシャルル王子はイザボー王妃様の態度によっては命の危険にさらされる。だから王妃様の身近にいるあなたに守って欲しいのよ」
「ヨランド様、なぜそれほどに・・・」
「シャルル王子は私の娘と結婚させるわ。フフフ、おかしいでしょう?まだ生まれてもいない娘の結婚相手をもう決めているなんて。でも私にはわかる。次に生まれるのは女の子で、未来のフランス王妃よ」
「・・・・」
「フィリップ4世の話がまだ途中だったわね。テンプル騎士団の解散。それもフランスの歴史の流れを変えた大きな事件よ」

 ヨランド様の話は続いた。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み