16、ブルターニュ公ジャン4世(2)

文字数 1,026文字

 イザボー王妃の話から、ブルターニュ公ジャン4世がシャルル6世のご病気とも深い関係があるということがよくわかった。王妃の話は続く。

「ブルターニュ公ジャン4世の裏切りは、シャルル5世を酷く怒らせたわ。1378年には懲罰として公国を没収し、フランス王領に併合した。でもそのことでブルターニュの貴族はフランスに反乱を起こした」
「ブルターニュでは継承戦争が終わった後でもいろいろなことがあったのですね」
「そして1379年にジャン4世はイングランド軍と一緒に帰国して英雄として迎えられた」
「・・・・・」
「その翌年、シャルル5世は亡くなり、王太子だった陛下がシャルル6世として即位した。その時陛下はまだ11歳だった。陛下の叔父であるブルゴーニュ公フィリップ、アンジュー公ルイ、ベリー公ジャンの3人と母ジャンヌ・ド・ブルボンの兄であるブルボン公ルイの4人が摂政になった。中でもブルゴーニュ公フィリップが摂政の中でも大きな力を持っていた」
「そうですね。その時の力関係がずっと続いて・・・」

 ブルゴーニュ公のフィリップが摂政として大きな力を持っていたことが、後の宮廷での争いにも繋がっている。

「ブルターニュ公のジャン4世はシャルル6世と和解して臣従する条約を結んだわ」
「お若い陛下がブルターニュまで敵に回していたら大変だったので、和解してよかったです」
「でもあの男はまたすぐに問題を起こした。大元帥になったオリビエ・ド・クリッソンと対立して、彼を排除しようと計画、1387年7月にブルターニュの貴族を集めてクリッソンを誘い出して捕らえたわ」
「そんなことがあったのですか・・・」
「ジャン4世は最初クリッソンの暗殺を考えていたらしいけど、貴族たちに反対されて、クリッソンから身代金と領土を奪って釈放したわ」
「ひどいですね・・・」
「クリッソンはそのことを陛下に訴えた。その時はもう私はフランスに嫁いで王妃になっていたのだけど、陛下は強い正義感のある方よ。でも正義感が強いからこそ、不正を憎み、いろいろ悩まれてご病気になられたのかもしれない・・・」
「王妃様・・・」
「陛下の仲裁もあってジャン4世はクリッソンと一時的に和解した。でもジャン4世は執念深く・・・ジャン4世、あの男だけは許せない・・・陛下のご病気はあの男が原因で・・・」

 イザボー王妃は泣き崩れた。

「王妃様、しっかりしてください」
「大丈夫よ。私が涙を見せるのはジャンヌ、あなたの前だけ。他の者には決して涙を見せないわ」


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