56、ルイ6世(2)

文字数 935文字

「父フィリップ1世が再婚したことで、ルイ6世の幼少期は悲惨だったわ。彼はサン=ドニ修道院付属サン=ドニ・ド・レストレ僧院学校で過ごしそこで生涯の親友シュジェールと出会ったのよ」
「よい修道院に入ったことで、ルイ6世はよい教育を受け、親友を得ることができたのですね」
「そうなのよ!シャルル王子も乳母や侍女の世話が必要ない年まで成長したら、王立修道院に入ったらいいわ」
「でも、それはイザボー王妃様が反対すると思います」
「イザボー王妃様は今はオルレアン公ルイ様の気を引くためにシャルル王子を利用しているだけ、ルイ様への熱が冷めればシャルル王子のことなど気にもかけなくなるでしょう。王妃様が気にかけなくても、シャルル王子を利用しようとする者は多い、逆に命を狙う者も多くて宮廷にいるのは危険よ」
「そうですね。シャルル王子様の立場は微妙で、今の宮廷にいるのは危険ですね」
「オルレアン公ルイ様には愛人との間の子がいるわ。その子は確かシャルル王子より1年ほど早く生まれているけど、訳ありの子だから間違いなく修道院に預けられる。王家の血を引く子は他の孤児とは違って特別扱いだから、修道院の中で最高の教育を受けて枢機卿や修道院長など高位聖職者になる可能性が高いわ。教会大分裂が大きな問題になっているけど、王家の血を引く優れた聖職者が出れば、そうした問題も解決されるかもしれない。もしシャルル王子が王立修道院に入れば、命が守られるだけでなく、一緒に教育を受けた高位聖職者を生涯の友にすることができるのよ」
「それは素晴らしいですわ。高位聖職者を生涯の友にすれば、間違いなくよい助言が得られます。それにその子がオルレアン公ルイ様の庶子ならば、シャルル王子とは母親の違う兄弟、あ、いえ、従兄弟になります。血の繋がりもある子と一緒に育てば、強い絆も生まれますね」

 オルレアン公ルイ様の庶子ジャン様とシャルル王子はその後本当に王立修道院で育てられ最高の教育を受けている。ただジャン様は勉強よりも体を動かすことが大好きで騎士に憧れ、聖職者になることはなかった。でも私たちが話をした時は2人ともまだ乳母の世話が必要な幼児で、どのような子に育つかはまったくわからず、私はヨランド様の話を夢中になって聞いていた。

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