魔法よりも、大切なこと
文字数 1,025文字
それからさらに数日後、みくは珍しく自分から鏡に向かって「ねえ、ねえ!」と呼びかけて、こんな提案をした。
きっと、サプライズをするつもりだったのでしょう。わくわくを隠しきれない、煌めいた瞳。でも、鏡越しに見ただけで、ワタシはみくの計画を知ってしまったのよね。
ワタシを想ってしてくれていることだからもう知ってしまったっていうのは内緒にして、手鏡をみくに託して、彼女の案内でその場所へご一緒することにした。
ワタシを想ってしてくれていることだからもう知ってしまったっていうのは内緒にして、手鏡をみくに託して、彼女の案内でその場所へご一緒することにした。
![](https://img-novel.daysneo.com/talk/d4195e54a9b56acc46f9f9929d2fcf9b.jpg)
そう言ってみくが連れてきてくれたプラネタリウムは、ワタシの思い出のその場所と同じ街に新しく作られた。時代の流れと共になくなったそのプラネタリウム関係者の方々は、表から見える場所ではなかったけれどそれに関わる活動を続けていて、もう役目を終えていたって投影機も捨てたりするはずもなく。倉庫にしまえるように一度分解して保管していた。
以前のように、街のランドマークみたいなビルの上の大きな投影ドームじゃなく、ちょっと目立たない坂の上の文化センターの最上階でまたイチからプラネタリウムを開館した。そのビルの途中階に当時の投影機をまた組み立てて、「かつて、あの有名なプラネタリウムで稼働して多くの人の思い出に残った投影機」として展示していた。
以前のように、街のランドマークみたいなビルの上の大きな投影ドームじゃなく、ちょっと目立たない坂の上の文化センターの最上階でまたイチからプラネタリウムを開館した。そのビルの途中階に当時の投影機をまた組み立てて、「かつて、あの有名なプラネタリウムで稼働して多くの人の思い出に残った投影機」として展示していた。
![](https://img-novel.daysneo.com/talk/f65054dcc80ebdceb5e95a57a92cbdeb.jpg)
あの頃は自然の光の一切入らないドームの真ん中で働いていたのに、今は燦々と日差しの射し込む窓際で、街の景色を眺めているみたいな配置にして……。
そう、残念だけど、完璧ではない。でも、魔法って、完璧すぎても良くないのよ。
なんでも叶えられるのなら、今日、こうやってみくがワタシのためにしてくれたことのありがたみも、彼女の優しさも。ワタシには感じられないってことになってしまうから。望みが叶わないよりも、その方がよっぽどつまらないじゃない。
なんでも叶えられるのなら、今日、こうやってみくがワタシのためにしてくれたことのありがたみも、彼女の優しさも。ワタシには感じられないってことになってしまうから。望みが叶わないよりも、その方がよっぽどつまらないじゃない。
どうしてそうして欲しいのか、なんて野暮を口にするより先に、みくはワタシの頼んだ通りにしてくれた。