第21話モノアイ
文字数 1,077文字
「これだったかしら?」
ギンコは、忘れ物と書かれた箱の中から、白いハンカチを取り出した。
「これです。良かったぁ」
少女はハンカチを握りしめた。
「大事なハンカチなのね」
ギンコのそのセリフに少女は頷く。
「はい、おばあちゃんに貰った大切な物なんです。だから、無くした事に気付いた時にはショックで」
どうやら、無くしてからずっと探し回っていたらしい。
「もっと探すべきでしたね」
遼太郎がギンコに言う。
ハンカチに気付き、店を飛び出した時に彼女を発見できていれば、こんな時間まで探し回らせずに済んだのだと、微かに後悔を覚えていた。
「こういうのは巡り合わせよ。何でも思い通りにはいかないものよ」
ギンコは優しく微笑む。
「あの、気にしないでください。忘れたのは私の責任ですし、鳴海君も忙しそうだったし」
彼女のその言葉は、確かに遼太郎を責める事ではなく、自身の落ち度を認めている物だった。だが、ギンコには疑問が浮かんだ。
「あら、遼太郎くんと知り合いだったの?」
彼女は遼太郎の苗字を呼んだ。名前を知っており、しかしギンコは知らない人物となれば銀の稲穂の常連などでは無い。ならば、遼太郎のプライベートでの知り合いという事になる。
「「え?」」
遼太郎は自分の苗字が出てきた事に気付いておらず、少女は無意識に言った事だったのか気付いていなかった。
何よりも、当人たちが驚いている事にギンコは驚いた。
(あれ、違うのかしら?)
何かの聞き違いだったのかとも思ったが、少女を見つめる遼太郎は気付いた。
「もしかして、アイノさん?」
少女の肩がビクリと跳ねる。そして少しの沈黙の後、小さく頷いた。
アイノは観念したように前髪を手櫛てぐしでかき分ける。
するとそこには、濃い紫色の大きな瞳があった。
それは比喩でもなんでもなく、瞳が1つだけ輝いていた。
彼女、アイノは単眼モノアイと呼ばれる種族で、彼女たちの眼球は1つしかない。その代わりに眼球は発達しており、大きさも9センチほどで視力も良い。そして、個人により親子間でも光彩こうさいの色が違う。濃い茶色や青。緑や黄色などの鮮やかさを持っており、宝石に例えられたりもする。しかし、その大きな瞳は他の生物に無自覚に威圧感を与えてしまうらしい。驚かれたり、怯えられたりすることに申し訳なさやトラウマを抱える者が多く、髪や帽子で目元を隠したりすることが多い。
「なんか、言い出すタイミングが無くて」
あはは。とアイノは笑った。
ギンコは、忘れ物と書かれた箱の中から、白いハンカチを取り出した。
「これです。良かったぁ」
少女はハンカチを握りしめた。
「大事なハンカチなのね」
ギンコのそのセリフに少女は頷く。
「はい、おばあちゃんに貰った大切な物なんです。だから、無くした事に気付いた時にはショックで」
どうやら、無くしてからずっと探し回っていたらしい。
「もっと探すべきでしたね」
遼太郎がギンコに言う。
ハンカチに気付き、店を飛び出した時に彼女を発見できていれば、こんな時間まで探し回らせずに済んだのだと、微かに後悔を覚えていた。
「こういうのは巡り合わせよ。何でも思い通りにはいかないものよ」
ギンコは優しく微笑む。
「あの、気にしないでください。忘れたのは私の責任ですし、鳴海君も忙しそうだったし」
彼女のその言葉は、確かに遼太郎を責める事ではなく、自身の落ち度を認めている物だった。だが、ギンコには疑問が浮かんだ。
「あら、遼太郎くんと知り合いだったの?」
彼女は遼太郎の苗字を呼んだ。名前を知っており、しかしギンコは知らない人物となれば銀の稲穂の常連などでは無い。ならば、遼太郎のプライベートでの知り合いという事になる。
「「え?」」
遼太郎は自分の苗字が出てきた事に気付いておらず、少女は無意識に言った事だったのか気付いていなかった。
何よりも、当人たちが驚いている事にギンコは驚いた。
(あれ、違うのかしら?)
何かの聞き違いだったのかとも思ったが、少女を見つめる遼太郎は気付いた。
「もしかして、アイノさん?」
少女の肩がビクリと跳ねる。そして少しの沈黙の後、小さく頷いた。
アイノは観念したように前髪を手櫛てぐしでかき分ける。
するとそこには、濃い紫色の大きな瞳があった。
それは比喩でもなんでもなく、瞳が1つだけ輝いていた。
彼女、アイノは単眼モノアイと呼ばれる種族で、彼女たちの眼球は1つしかない。その代わりに眼球は発達しており、大きさも9センチほどで視力も良い。そして、個人により親子間でも光彩こうさいの色が違う。濃い茶色や青。緑や黄色などの鮮やかさを持っており、宝石に例えられたりもする。しかし、その大きな瞳は他の生物に無自覚に威圧感を与えてしまうらしい。驚かれたり、怯えられたりすることに申し訳なさやトラウマを抱える者が多く、髪や帽子で目元を隠したりすることが多い。
「なんか、言い出すタイミングが無くて」
あはは。とアイノは笑った。