第9話 デート

文字数 1,060文字

「本当に気が変わるなんて思ってなかったからビックリしたわよぉ」

 ミラとのデート当日、待ち合わせ場所に現れた彼女は、季節感を前面に出した、ゆるりとした明るい赤色のコーディネートで現れ、遼太郎の顔を見るなりそう笑った。

 時間は少し遡り、4日前。ミラとのデートをお願いしたい。と店長に伝えると、店長は直ぐに電話で連絡を付けてくれた。

 実際、遼太郎は内心で不安があった。先日ミラが自分に言った事、付き合う云々というのは冗談だとわかったが、デートの話もその延長線上のものでは無いのか。その場で言った適当な会話の1つで、今の自分の判断は空回りなのではないか。その疑念はあったのだが、

「そう、わかったわ。うん、そう伝えておく」

 それだけ言って店長は電話を切った。

「今日お店に来るから、その時に日時を決めましょうって」

 その後、ミラもデートを喜んでくれているらしく、ミラはすぐに店にやって来ると、日時を決めると、デートプランも任せてほしいと言い出した。

 確かに高校生のデートプランでは面白い事も無いのだろう。それならばミラに任せてしまった方がいいのだろうと考え、お願いする事にした。

 そして今日、デートをするのだった。

「気が変わった、というか、なんというか」

 遼太郎の表情が可愛らしかったらしく、ミラは微笑んだ。

「楽しいデートにしましょうね」

「よ、よろしくお願いします」

 そして、遼太郎とミラのデートが始まった。

「まずはこの辺りのお店を見て回りましょうか」

 不意にミラは遼太郎の手を取る。

「この方がデートぽっくて良いわよね」

 遼太郎はその問いに答えられないまま、彼女についてゆく。

 ラミア特有の蛇の胴体をくねらせながら歩く様は、道行く人の視線を釘付けにするらしく、すれ違う視線の殆どはミラの尾を見ていた。

「ねぇ、すれ違う人の視線が気になる?」

 ミラは微笑みながら聞いた。

「いえ、俺は特に。適当なお店に入りますか?」

 その答えに彼女の笑みは濃くなる。

「ふふ、気を遣ってくれるのね。でも私も気にならないの。確かに大半は興味本位や物珍しさもあるんだけど、中には違う視線を向けてくる男性もいるのよ?」

 遼太郎は頭上にはてなを浮かべながら、ミラの話を聞く。

「中にはね。この蛇腹が良いって言う人もいるの。一種のフェチズムね」

 その証拠とばかりに、すれ違う時にミラを見ている男性の数人に対し、彼女が手を振ると明らかに照れたように目を逸らせた。
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