第13話 遅めの昼食

文字数 1,009文字

「本当に現地調査だ」

 少女たちに近づいたミラは、直ぐに打ち解けたようで談笑が始まった。

 その様子を眺めていた遼太郎だったが、冷静に考えてみれば、側から見れば自分は不審者に該当するのでは? と思い、一番近いクレーンゲームに100円を投入する。

 アームを前後と左右に動かして、ヌイグルミを狙う。

「よしッ」

 アームは見事にヌイグルミの頭を挟み持ち上げる。そして、10センチほど引きずったところでアームの隙間からヌイグルミが滑り落ちた。

(もう1回、とはならないな)

 冷静に考えれば、30センチほどの大きさのヌイグルミを取ったとして、別に部屋に飾るわけでもないし、集めているわけでもない。

 結果的に取れなくて良かったのではないだろうか。という思いがよぎった時、

「お待たせ。いろいろ話が聞けて良かったわ」

 と、ミラが戻って来た。

「やっぱり、流行りが変わりそうな兆しがあるわね」

 その後も、目に付いた数組の女子高生に積極的に話し掛け続けた。

「形も色も少しずつ変化している」

 戻って来たミラは、手帳に物凄い勢いで聞いた話をもまとめて行く。

 手帳から目を離す事なく独り言が続く。

「既存のシャツを改造する事は予想していたけど、あんな事までしてたなんて。色も流行から少しズレ始めてるわね」

 その光景は、今までの緩やかな雰囲気は消え、デザイナーとしての探求と創造が顔を覗かせていた。

「次はシックなものがウケる気がする」

 彼女の頭の中では色々な事が巡っているようで、遼太郎が聞いている独り言は繋がっている気がしない。

 3ページにも渡り書き続けた手帳を閉じると、ミラは満足そうに頷いた。

「うん、情報は集まった。後はアイディアが降りてくるまで頑張ろう」 

 と、自分に言い聞かせた。

 そして、今日1日のデートが終了した。

「ありがとね遼太郎くん。朝から付き合いっぱなしで疲れたでしょ?」

 ミラは言いながらグラスを傾けた。

 現在の場所は、洒落たレストラン。ゲームセンターを出た時には昼はとうに過ぎていた。どこかで昼食を。と連れてこられたのがこのレストランだった。

 ミラは席に着くなりワインを注文し、そのおまけ程度に料理を注文した。彼女は、ご馳走するから好きなものを注文して良いと遼太郎に言ったが、言われたほうの遼太郎は、料金を見て躊躇を覚えた。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み