第3話

文字数 2,416文字

ザ・ゲーム(1979年作品)第3回 南条財閥のドン南条剛造は、久我島に行き、誘拐された孫の則夫を助け出してくれと依頼する。

ザ・ゲーム(1979年作品)第3回

作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
 「西くん。君の事は数分間の間に調べた。
このファイル通りの男だとしたら、君と契契

しよう」
南条財閥のドン、南条剛造が分厚い俺の資料ファイルを手に言った。

つまりは、南条洋子の義父にあたる。
俺は言った。
 「話は早いわけですな。誰に調べさせたの
わかりませんが。そのファイルの通りの男
すよ。私は」
 「わかった。犬にはエサを与えないと動きはしないだろうからな。ただし、これは自分自分を守ってくれと言ったと思うが、私は別の事を依頼しよう」
「いって、お義父さん、それじゃ、話が」
 「お前はだまっていろ。わしのやり方の方がてっとり早いのじや」
「成功報酬は前金で五千万、成功後五千万だ「もちろん税抜きででしょうな」
「もちろんだ」
「で仕事は」
 「これから聞いたと思うが、久賀島という無人島へ行ってもらいたい。私の孫を助け出して誘拐した奴らを皆殺しにしてくれ。
これが孫の南条則夫のりおの写真と資料だ」
「待って下さい。人を殺すですって」
「西君、君の過去をすべて洗ったと言っただろう。君のベトナム戦におけるニックネームは確か狂獣士だったはずだ」
俺は言葉につまった。「日本国内で殺人。それで一億円の報酬というわけですか」
 「必要経費は別に認める。それに武器の方
南条重工業が関係している製品なら何でもいいたまえ。ただし小型原爆は無理だが」
剛造は含み笑いをする。最近のバブルベトナム戦争で戦時用品で儲けた財閥なのだ。
俺は、ちらっと南条洋子の方を見た。彼女
は無表情だった。俺はこれが巧妙にとてつもなく大きな仕掛けられた罠だとはこの時気づかなかったのだ。
■ 久賀島へ行く前、俺は一日の休暇をもらい、久賀島の南に面する沖縄へ飛んだ。
1972年(昭和47年)に日本本土に返還された沖縄は、米軍占領下のながりが残る。
ベトナム戦争は1975年に終わったが、
沖縄那覇はベトナム戦争時代、休暇でよく来た町だった。
いきつけのパーだったメソンヘ入った。
「よう、西さん丈さん。何年ぶりかね」
バーテンの才賀はまだ俺の事を覚えていた。
  「そうさな、もう10年になるかな」
才賀はやせこけた男でかまきりを思わせる。「今は何の商売だい、丈さん」
「おはずかしいが、探偵ってやつさ」
「わつ、かっこいいじゃないの。ハードボイルド小説みたいでさ」 
才賀はグラスをみがきながら言った。俺は、まさか、そんな事態になるとは夢には
思っていなかった。
「そんなにかっこよくない。だいたい日本じゃ武器を持てないしな」俺は少し照れている。




 ドアが開いて、米兵が数名入ってきた。
 「おい、お前、丈じゃないか」黒人の大男がそう叫んで俺の方へ走ってくる。ベトナム戦争の戦友ビリLだった。
「お前、まだ生きていたのか」 「お前こそだよな」俺達はだき合った。

 「ピリー、まだ軍隊にいるのか」
 「そうさ。黒人にとって軍隊はまだましな商売だからな。それよりお前、どうしてここへ
「うん、ちょっと仕事でね」
「丈さん、今、私立探偵やっているんだってさあ、」パーテンの才賀が口を入れた。「やめろよ、才賀」
ピリーは少し心配そうな顔をした。「危い商売やっているな。あいかわらず。ど
こへ行くんだ。親友の俺にもいえないのかなあ。
 「うん、ちょっとね」
 「言えよ、丈、水くさいぞ」
 俺はしかたなく、小声で島の名をささやいた。
 その名を聞いてピジーは急に顔色を変えた。少し黙った。しかし口に言葉が、
「丈、やめておけ、親友として言う。あの島にだけは近づくな」大きな声でビリーは言った。と。俺はそのあわてぶりに驚いた’ 
「一体どうしたんだい、ビリー、ふるえているじゃないか。ベトナム戦の猛者のお前が」 「いいかい何度モいわすなょ。。やめるんだ、丈、命がいくつあってもたりないぞ」
先刻から俺達の話を聞いていたカウンター
に居た男達が側に来た。たぶん、俺を見張るように南条にいわれているのだろう。
「黒人のお兄さん、ちょっと静かにしてもらえないかあ」
 「何だ、あんた方は」
 「誰でもいい。西、南条さんに従って早く島へ行け。それに二度と島の名は口に出すな」
「いいか、そこのバーテンもわかったな」
男の一人がドスでビリーのほほをかすった。うっすらとほほから血が流れる。
「やめろ」ビリーが、戦友をとどめた「こここは場所が悪い」
「大丈夫か。ビリー」
「いいか、わかったな、西」男達はいいすてバー=メソンから出て行った。
「ああ、丈、お前さん、あいかわらず疫病神だな」
ビリーはもうつらそうに言った。あのベトナム戦の時の悲しげな顔だった。
 「すまん」俺は心からあやまったた。

しかし一体あの島に何があるというのだ。
ピnノーに聞こうとしたが、彼は戦友達を引きつれてバーから出て行く。才賀も口をつぐんだままだ。俺にすぐ出て行ってほしいという顔だった。
 「わかった。出ていくよ」 「すいません、丈さん。あいつらここをシマにしている
東郷組のもんなんだ。あいつらににらまれたら、この辺で商売ができないんだ」うつむきかげんで才賀はつぶやいた。
 「わかったさあ」
 俺はドアを開けた。路地裏で悲鳴が聞こえる。ゴミだめの中へ男が二人ころがされている。さっきのやつらだ。それでもビリーはテクナーナイフで彼らを切り刻んでいる。やくざは痛みと驚きで冷あせをながし、失禁しているようだ。

「いいかげんにしておけよ、ブッチャービリー。ベトナムじゃないぞ、この場はないそいつら死んじまうぜ」
 「わかつているさ、それより丈、どうしても島へ行くのか「ああ、契約しているからな」
「気をつけて行けよ。そして又あおうぜ」
「こんど会う時はおごるぜ」
「あばよ」ビリーは二人のやくざをか次上げる。

作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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登場人物紹介

俺。横浜にいる旧いタイプの私立探偵

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