第1話

文字数 1,888文字

欲望のザ・ゲーム第1回

一九七九年の事だ。 私立探偵業の俺が、 高校のクラスメイトの洋子に出会う。今や 南条財閥の奥方だ。この出会いは意外な展開へと俺を導く。

欲望のザ・ゲーム(1979年2024改訂作品)
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所


南太平洋上。静かなさざなみ波の音に混って楽団の音が聞こえてくる。

型クルーザーヨーロッパ公爵家「リーマン公爵三世号」が岸上を航行していた。。カナダの旧式フリーゲート軍艦を買取り、個人用として改造した船だ。
しかし少し離れた海面上に潜望鏡があがっていた。それには気づかぬ。
船の上で、気持ち良く酔った男が二人、舷側に出て潮の香リをかいでいた。

手の中のグラスにはまだ酒が残っている。
二人共白のフォーマルスーツを着ていた。 
 「ふーつ、酔ったよ」
 「いや、まだまだ、パーティはこれからさ。これからおもしろくなるところさ」
「ところで、君、あのリーマン候爵の側にいた東洋人の女性は誰なんだ」

「何だ。君、知らなかったのか。彼女が有名な新星の華。ヨーコ・南条だよ」
 「彼女が、ヨーロッパ社交界の新星か]
 「そう、そして日本の大財閥の継承者だ」
 「リーマン公爵も彼女の金に目がくらんだか」
 「先妻が死んでだいぶたつしね。それに確かに彼女は美人だしな」 
話の間に突然全衝撃か船を襲った。

潜水艦から発射された小型魚雷が爆発したのだ
閃光と轟音。振動か船全体を揺がした。
ブザーがなり、パーティは中止された。
船員が重機関銃をセットしてサーチライトが海上上を照らす
「何だ、あれは」

クルーザーの右舷に.潜水艦が孚上した.クルーが.臆しながらクルーザー装備の重機機関銃が、火を吹い.た。か射程外だつた。
逆に潜水艦から砲撃される。通信アンテナ
が吹き飛ばされた。連絡が不可能となった。

潜水艦から拡声器を通じて声が聞こえてきた。

『無駄な抵抗はやめたまえ。無益な殺生を我々はしたくない。我々はミセス南条に用事があるのだ。我々のポートが、そちらの船へ接舷する。いいか無益な攻撃はするな。魚雷の照準はそちらに合わせてある』
 「どこの国の潜水艦だ」
 「わからん。国籍はわがらんが、どうやらソ連製らしい」
 ハッチが開き、やがてモーター付ゴムボートがひっぱり出され、クルーザーの方へやってくる。

ゴムポートをあやつっているのは屈強な男たちだ。

 船のブリッヂには一人の女が待っていた。まわりに武装した船員がとり囲んでいる。彼女はきつい感じのする美人だった。船に近づく男たちを見ていた。
男のはボートから身ごなし軽く船のタラッをあがる。男は船員に見張られながら、プリ’ツジに一人あがってきた。女は驚いたようだった。

まるで死人を見たかのようだった。男が口を開いた。
 「ひさしぶりだな。ヨーコ。いい御身分じゃ
ないか。世界中をだいぷ探したぜ」
■ 彼女に出会ったのはわずか1ヵ月前の事だった。
横浜でしがない探偵事務所というよりは、何でも屋の俺は、ホテル=ミナトヘ行こうとしていた。わずかばかり俺のポケットはふくらんでいた。
久しぶりのうまい食事にありつこうとしていた。
ボロ車をホテルの駐車場へ入れ込もうとしていた。

中で悲鳴が聞こえた。その声の方へ車をころがした。
女が無理やり車へっれこまれようとしている。

こんなシーンでは当然俺の役目は決まっているのだ。

 俺は後から一人の男につかみかかる。

 「やめろ。大の大人が三人もかかってする事じ?ないだろう。女性をいじめるのはやめな」
俺はカッコをつけていった。もちろんナイトのつもりだった。

 レイ=バンサングラスをつけ、ブルックスブラザーズのスーツをすきまなく着こなした男達はどう見ても正業についている男達には見えない。

いわゆるインテリ=ヤクザつて手合いだろう。
見なりは俺よりかなりいい。が上着の下か
らわずかに拳銃がのぞいていた。

 「うるさい。関係ない奴はひっ込んでいろ。
ケガをしたくなけれぱな」
すごみがあった。
 俺としてはここで引きさがるわけにはいかない、手刀で右横の芳の首すじをなぐりつけ左側の男の金的をけり上げていた。

同時に、左側の男から拳銃を抜き取り、
その拳銃の安全装置をはずしていた。

 俺はそれを運転席の男の頭に突きつけていた。
「いいか、消え去るのはお前達の方だ」
 我ながら手際がよかった。

車は七の女と俺それから男からうばった拳銃残して走り去った。

 俺は自分が助けた女の顔を見た。どこかで見た顔だった。どこか記憶にひっかかる所がある。俺はじっと自分の顔をみつめかえしてる女に尋ねた。

 「ひょっとして、、あんたは」
続く
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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登場人物紹介

俺。横浜にいる旧いタイプの私立探偵

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