第2話

文字数 2,034文字

ザ欲望のザ・ゲーム(1979年作品)第2回高校のクラスメイトの洋子は南条財閥の嫁となっていた。そして事件の調査を依頼してきた。

ザ・ゲーム(1979年作品)第2回

作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
俺は自分が助けた女の顔を見た。どこかで見た顔だった。どこか記憶にひっかかる所がある。俺はじっと自分の顔をみつめかえしている女に尋ねた。
 「ひょっとして、、あんたは」
「そう、やっと思いだしてくれたわね。西さん。私は水原洋子よ。高校時代のクラスメイトだったわね。私はすぐ気がついたわ。今は南条洋子だけれど」
金がめっぽうかかった服だった。今の俺の身なりと天と地の違いだった。
「あれ?、驚きだぜ。まさかね。しかし、お宅は、あの頃からキレイな子だと思っていたけど、今の方が」
「お世辞はけっこうよ。西さん。助けて下さってありがとう。こんな所で立ち話も何だから」 彼女は冷たく言い放った。
「そうだな。あなたとなら、積もる話もあるわけだ」昔に恋人だからなと。いいそうになる。
俺達二人は、ホテル最上階のラウンジヘ上った。
ストールに腰をかけ、酒を注文したあとに俺は彼女に尋ねた。
「一体、何事なんだい。あの男達は」
 彼女は一瞬、ためらいの色を見せ、それ
ら意を決していった。
 「西さん、お願いがある。先刻の腕からし
て、あなた、普通の会社員じゃないようね。
でも風のたよりであなたアメリカへ留学していたと聞いていたけれど」
「アメリカへ行ったのは本当さ。が俺はアメリカのエリート・コースには乗れなかったのさ。俺はベトナム戦争へ行ったんだ。だからアメリカ国籍も持っている。何人かわすれたが、人を殺したよ。今じヤこのY市でしがない探偵稼業を、といっても興信所を営んでいるわけさ。なんとか年つまりは、でもやかな。
離婚問題とがそんなちっぽけな仕事だが、けっこう食ってはいける」「わかったわ。やはりね。かえって頼みやすいわ。
お願いがあるの。私を助けてほしいの」
「どうやら警察には話せない事情がありそうだね」
 「そう、実は私の子供の命がからんでいる問題なの。私の名は南条洋子。つまりはあの南条財閥の嫁なのよ」 
南条財閥はいわゆる明治に甲州から来て絹の貿易で栄えたY市発祥の財閥だ。
 「君は玉の興に乗ったわけか」
 「でも私の夫、南条安夫は、あいつらの仲間に殺されてしまったの」
俺は何か月前の新聞記事を思い出していた。交通事故かそのような内容だった。
「殺されたって、あいつらは一体」
 「正体がわからないの。でもどうやら小さな無人島がからんでいるようなの」
 「島って。それはダンナの遺産かい」 「そうというか。南条財閥の持ち物なんだけれど久賀島という沖縄県と鹿児島県との境にある小さな島なの。これといった産業もなく、今は人も住まなくなって久しいわ。無人島なのよ」
「その島が。どうからんでくるんだ」
「その島に何かあるらしいの。おまけに私の子供が誘拐されて、その島にいるの。子供といっても実質実は血のっながりはないの。南条安夫の死に別れた先妻の子供なのよ」

「それで、あんたも連れ去ってどうしょうというつもりかな」
「あの島に何かが隠されているらしいの。それを私と子供を連れ去り、舅の南条剛造から聞きだそうという腹らしいわ」彼女の眼は助けをうったえていた。そして彼女は美しかった。美しさはそう一つの財産だ。そうう考え方だ。俺はね。
俺は、女は過去のイメージから少しも変化しいないという考えを持っている。俺の生き方だ。今の彼女の本当の姿がどうであろうともだ。
 「わかった。ひきうけよう」
 「ちょっと待つでね。南条剛造にあなたのを電話するわ。そして家に来てもらうわ」

彼女は固定電話BOXへ向かった。かなり長いやりとりがあったようだ。

俺は彼女の車、フォード・カマロに乗せられていた。彼女は(ンドルをにぎりながら言った。

「言っておくけれど、私と舅の仲はいい事がないのよ」
俺はニヤリと 「わかってるよ。よくある話さ」
南条の家はY市郊外の歴史的なエリア代表的な丘陵地帯にあり、その姿は森林にかこまれたヨーロッパの城の風情だった。門衛がだまって、無表情に彼女を通した。
 老人がアールデコ調の応接室にすわっていた。
今にも死にそうな、片足を棺桶につっこんでいる感じだったが、眼光だけはするどかった。

「君が西くんかね。話はこれから聞いた」
老人はなめまわすような眼で俺を見ている。
「失礼だが西君だったか?、 嫁のいう程、腕が立つようには見えんのだが」
「お父さん、私がこの人の腕は保証するわ。ベトナム戦争に従軍して赤い殊勲賞レッドバッジをもらっているのよ」
冷たい眼ざしで剛造は洋子を見た。はき捨てるように言った。
 「お前に、気やすくお父さんとぱ呼ばれた
はないのだが、その際だ。条件はつけられないな」 

剛造は、近くにいた執事を呼んだ。
執事は剛造に分厚い紙ファイルをわたした。

ザ・ゲーム(1979年作品)第2回
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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登場人物紹介

俺。横浜にいる旧いタイプの私立探偵

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