第17話

文字数 8,161文字

二〇二〇年七月十二日

 成美は遊ぶだけ遊んでみた、3年間彼氏を作らなかった、久しぶりに恋愛をしてみたくなった相手が俺で、時間をかけるつもりだったと言った。それで、昨日は何もしないつもりだったのに、俺が手を出したので男は皆んな同じだと思ったとも言った。俺は昨日何もしなかったら、絶対に近付かなかったはずだ、それで手を出したと言った。また、成美は俺がアメリカに行くことも遠距離恋愛も考えておいたから大丈夫だと言い、俺は彼女がそこまで考えていたことに驚いた。家に帰ろうとした時、自分が勤めている会社の商品だと、男性用スキンケアとシャンプーを貰った。社会人生活をしているとは思わなかったが、いつ出勤するのだろうという疑問は隠し、これも嘘である可能性を思い浮かべた。

 家に帰ると、達也が成美の話はしないで欲しいと言った。分かったと答えて一緒に運動をした。

 達也は俺と成美のことを気にしないと思っていたが、不愉快そうな気配を見せる彼からその予測が外れたことが分かった。人の能力や性向を見抜くこととその人の感情を把握することは完全に別の領域であったのだ。俺が人に恵まれていたのは、人の内面を見抜いて話し合ったからでなく、本気で接しようとした努力をしたからだったのだ。

 これからは成美について考察を行いながら、自分の感情に従ってみることにする。

<昔、見た目に口出しされたことが多くて今もコンプレックスが少し残ってる。ストレスが限界に達した時期には、通りすがりの人が自分を嘲笑う幻聴が聞こえてきた。軽い拒食症になって、爆食した日は指を喉の奥に入れて吐いた。そのお陰で苦しまないで楽に吐く方法を習得した>
 意外だと思った。これからは冗談でも外見の話はしないことにしよう。

<恋愛関係になっても『好き』という言葉をあまり言わない。そして、私にも言わないで欲しい>
 もし、その言葉が聞けないとしても寂しく思わないように、心を動かせなかった自分のせいだと考えよう。

 小説の後半の内容を変えよう。何かできそう。

二〇二〇年七月十三日

 達也のミュージック・ビデオの撮影を手伝った。成美に暫くは会えないと言ったら、会いたいとメッセージをたくさん送ってくる。でも、面倒だと思わず、むしろ嬉しい。また、成美は下ネタが上手な優しくてエロい女だった。自分の呼び方を姫にして欲しいと言われたから、これからはそうすることにした。彼女は今日も夕方から友達とお酒を飲む。夜中に成美から電話が掛かってきてテレフォン・セックスをした。可愛らしくて抱きたい。

<お酒を飲む時にはおつまみを食べない。理由は太るから。だからチュッパチャプスのようなロリポップがおつまみ。ゼリーとナッツも好き>
 成美の栄養バランスと健康管理に気を遣おう。金銭的に余裕がなくて碌にできないと思うが、できるだけやってみよう。

<アクセサリーの中でイヤリングが一番好き。派手なデザインと真珠が好み>
 アクセサリーの店があったら、成美に似合うようなイヤリングを探してみよう。

二〇二〇年七月十四日

 今日も達也のミュージック・ビデオの撮影。成美とはメッセージと電話で我慢している。早く会いに行きたい。

 成美は電話で「今、私のタイプの人が告白してきたけど、どう思う?」などの話をしてきた。やはり自分から告白はしないかと思い、俺から付き合おうと言った。
「ふーん、翔太がどうやるのか見て決めるー、今はまだ答えてないよ、分かった?」
 何だそれと思いながらも、本当に小説の女主人公にピッタリだと思った。

 また、成美は浮気するよと冗談のようによく言うが、俺は彼女の性向を分かっているから、そう言われる度に不安が生じる。いやいや、冗談でしょう。

<映画好きで、学生時代から観た映画チケットを集めてる。好きなジャンルはホラー以外全部>
 映画が好きなこともホラーを観ないことも俺と同じだ。今の燃え上がる感情が冷めた時に、映画を見たり本を読んだり散歩をしたりする方向に行くのも良いと思う。

<うなされることが多い体質。だから、夜も電灯を点けておくし、独りでは深く眠れない。今年の2月から一人暮らしを始めたけどまだ慣れてなくて怖い>
 体力が枯渇して精神に悪影響を与えないように、たびたび睡眠状態を聞こう。

二〇二〇年七月十五日

 達也のミュージック・ビデオの撮影の最終日。成美は3日間深く寝れなかったのか、眠いから早く来て欲しいと言った。夕方に終わると思った撮影が午後11時まで続き、終電に乗って彼女の部屋に行った。ドアを開けると、まだ化粧を落としておらず外出着の可愛い姿で、重い目を開けようとしながら迎えてくれた。成美を見ていると心の中に幸せな痒い感覚が咲く。強くハグをして頬に唇を軽く何度も当てた。会いたかったと数えられないくらい言葉を交わした。成美が疲れていたことが気になって大丈夫なのかと聞いたら、彼女はより密着してきて顎をあげた状態で俺を見詰めた。彼女の体調管理のために寝かせようという理性が飛び、体は止まることなく2回連続で愛を確認した。遅漏だから長くやることはできたのだが、休まずに連続でやったことはなかった。成美との初めての夜の営みより気持ち良くて、元々独りであった存在が分けられて2人になったと思える程だった。古臭い表現であることは分かるが、これ以外に表現できる言葉がない。性的な能力の問題で関係が早く終わるという心配はしなくても良くなった。

二〇二〇年七月十六日

 成美は昼から予定があり、俺は小説の後半を修正したくて家に帰った。彼女はメッセージのやり取りが早い人で、用事がある時でないとすぐ返信がくる。それで、会っていなくても様々な会話をし、好みやどのような人なのかや日常などを知ることができる。他人を理解する過程が辛くないこともあるのだと思った。連絡をする時も、小説執筆をする時も、ウーバーイーツのバイトをする時も、運動をする時も幸せだ。

 仮想通貨の収益が出始めた。まだ金額は大きくないのだが、これからのデート費用はどうするか悩んでいたから、収益が無いことよりは良い。助かった。

 成美が俺の膝にあるストレッチマークを見て格好良いと言ってくれた。それは急激に背が伸びたことがなく、太ったこともないのにできた傷跡だから、俺にとってはみっともない瘢痕だった。だが、彼女は虎の毛皮みたいだ、白いファッションタトゥーを入れたようだと言った。コンプレックスだと言う程ではなかったが、成美の一言で10年間目に入れたくなかった身体の一部が誇りに思える部分に変わった。

 成美は俺の筋肉が好きだと言った。特に大胸筋が格好良くて好きだと言った。運動して良かったと思った。

<ジャヤのヤギミルク・ハンドクリームが好き。シャワーを浴びた直後の濃い石鹸の匂いがするから>

<クリーミーな味が好きじゃない。甘酸っぱい味が好き。コーヒー味と濃いチョコレート味が好き。そして、野菜が好き。トマトが好き>

二〇二〇年七月十七日

 成美のお陰で小説が上手く書けるようになった。今日やったことは、バイト、運動、成美と連絡、小説執筆。

 書きたい欲求が解消されたからであるのか、毎日が幸せであるからなのか、考察をしたくないと思う時が多くなった。

 成美は家に達也がいる時に電話ができないことについて文句を言った。暫くは仕方ないから我慢して欲しいと答えた。

二〇二〇年七月十九日

 成美の部屋に行き、何時間も何回もやって汗でシャワーを浴びた。他の時間には一緒にユーチューブを見たり料理をしたり小説を書いたりした。今日は彼女の部屋に泊まる。

二〇二〇年七月二十日

 昨日と同じ。

二〇二〇年七月二十一日

 家に帰った。バイト、運動、小説執筆。最近のような日々を過ごして感じたことがある。俺が今まで自分をほぼ三人称視点で扱っていたこと。人生が今年から始まった気持ちである。綺麗に体を作って写真を撮った時も、食文化考察をしていた時も、そして、今も自分の感情を無視していない。もうオートミールは食べたくない。もう辛い考察なんかしたくない。この瞬間瞬間を楽しもう。

二〇二〇年七月二十四日

 深夜に成美から電話が掛かってきた。酔っ払った声で自分の部屋に来てと言った。明日会う予定だったのに、何かあったのかと心配になり、電話を切らず普段着でタクシーに乗った。成美の部屋に向かう途中、彼女は俺に怒りながら暴言を吐いた。望み通りにタクシーに乗って行っているのに、訳も分からずこのような扱いをされることに腹が立った。それでも理由があると思って黙って聞き、タクシーの向きを変えたい気持ちを抑えた。また、今日は自分の家に友達を寝かせるから、ラブホの予約をしておいてと言われた。本音が聞きたくて彼女の家から徒歩20分くらいのラブホを予約した。彼女の部屋に着いてからラブホまで行く間に、悪口を言われたり噛まれたり背負ったりして忍耐するのが辛かった。やっとラブホに着いて話してみたら、俺が平然とゴムを付けずにやり、中に出したことが問題であるということだった。最初からピルを飲んでいると分かっていたからした行動であり、出す前には中に出しても良いのかと聞いたのだが、なぜ今更怒っているのか理解できなかった。成美は自分のことを大切にされていない気持ちになった、普段は言いたいことを我慢して今日みたいに一気に爆発すると言った。そう感じたら悪いと謝り、姫は俺の大切な人だと言い、抱いてから頭を撫でてあげた。成美は今まで俺が生きてきた時間の中で家族以外で一番特別な女であるのに、その気持ちをどうしたら伝えられるのかが分からなくて心が重かった。一緒にシャワーを浴びて寝るつもりだったが、成美がキスをしてきて火が付いた。今日は俺がゴムを付けたが、成美がゴムを外してからそのままやって欲しいと言った。

 成美は達也とのことも話した。友達として考えていたが、キスをしてきて断り、その後に達也が本気で謝ったから自分がキスをしたと。彼女は自分の心理を、自分で持っていたくはないが人にあげるのは勿体無いと思う、悪い気質だと言った。そして、達也に対しては俺のように男として好きな感情がなく、当時も達也に自分との関係に耐えられるのか聞いた、今言ったことを3人で会って話せると言った。むしろ、今すぐ達也に電話を掛けて俺のことが好きだから、不穏な空気にしないでと言いたいと言った。嬉しかった。電話はやめさせた。

二〇二〇年七月二十五日

 成美は昨日の乱暴な言動を覚えていないと言った。彼女の記憶が無いのならその時間を耐えて俺たちの関係を深めようとした努力の意味が無くなる。感情のゴミ箱にされた気持ちになった。成美は朧げに思い出せそう、今後気を付けると言った。

二〇二〇年七月二十七日

 セックスしている途中、成美が「翔太、大好き」と言ってくれた。終わってからは正気になって「セックスでそれを言わせるって、翔太凄いね」と言った。

<喧嘩をしたら会話で仲直りするタイプだよ>
 そう見えないのだが、信じてみよう。俺も真面目に向き合って話す努力をしよう。

<元々生理痛が酷い方ではないけど、最近は痛くなった。だから、生理の時にきつく当たるかも知れない>
 その期間には何を言われても、もう一度理解する態度を失わないように気をつけよう。

<噛むことが好き>
 キスをする時に唇を噛まれるのが痛くてストレスだったから言った。その後からは弱く噛む。お互い相手に合わせる関係だと感じられて有り難い。

二〇二〇年七月二十八日

「今まではセックスを何時間も長くして楽しむって言う人が理解できなかったけど、今はその気持ちが何なのか分かる」
「普段は短くするのが良いと言っただろ」
「2〜30分くらい、それは今も良いけど、こうするのは狂いそう、意識が無くなるってこれかなと思っちゃう」

<気に入った食べ物を飽きるまで食べるタイプだよ>
 確かに、同じメニューを食べる日が多い。

二〇二〇年七月二十九日

 成美は自分の机を完全に俺に譲り、「それは翔太のものだよ、小説書くことに集中して」と言ってキスしてくれた。

二〇二〇年八月三日

 1週間の半分以上を成美の部屋で過ごす。

二〇二〇年八月四日

 一緒に料理をする時もあるが、成美が独りで作ってくれる時もある。特に俺が小説執筆で疲れて倒れるように寝た日の翌日は、起きたら目の前にサンドイッチとコーヒーがある。ラブホ事件で愛情が少し冷めたが、成美が努力してくれることが伝わり、今は彼女がもっと可愛らしく感じられる。

 成美の部屋に泊まる期間が長くなるほど体の相性が日々限界を突破するが、日常の部分でお互いの価値観と思考方式が非常に違うことを感じる時が多い。その時に成美はいつも俺が間違っていることを前提に咎めてくる。面白く話すために冗談で言ったのか、本気で上から目線で言ったのか判断が付かない。それで、残念な気持ちが溜まっていくから真剣に話してみようかと考えていたが、こうやって良くしてくれることをみると各自の表現方法が違うからだったのではないかとも思う。彼女ともっと時間を共有してみたい。

二〇二〇年八月五日

 夕方に達也の部屋に帰った。成美とメッセージを交わす内容が変わった気がする。俺に対する彼女の愛情が冷めた感じ。冷めたという表現は良くないな。俺に興味が無くなっている感じ。これも同じか。肯定的に表現できない。この事実を直視することは悲しいが、もたもたしてこの関係が自然消滅するようにさせたくない。話してみよう。

二〇二〇年八月六日

 再来週ホテルで休んだり遊んだりしようとの成美の願いで予約をしておいたのだが、その日は無理そうだからキャンセルしてとメッセージがきた。今回だけでない。約束を違える時が多い。

二〇二〇年八月九日

 成美と明日会う予定だから、真剣に話してみるつもりだったが、今日大喧嘩をしてしまった。いや、これは喧嘩でもない。今日の午後3時くらいに成美から電話が掛かってきた。午後6時に出掛けないといけないのに、疲れ過ぎている状態なのに眠れないから来て欲しいということだった。心配になって電話を切ってからすぐ成美の部屋に行った。意識が半分飛んでいた成美は俺が隣にいることを確認してから寝た。成美が起きて外出の準備をしている間に俺は豆腐と遊んでいたが、ベッドに上がった瞬間「お前もう1回靴下履いて上がったら殺すぞ」と言われた。我慢しようと感情を抑えても怒りが消えなくて、「言葉遣いは綺麗にしよう」と一言残して達也の部屋に戻った。

二〇二〇年八月十日

 また三人称視点に戻らないといけないことは分かっているが、その無味乾燥で無彩色の世界に入りたくない。二つの世界を知ったからより苦しくなった。

二〇二〇年八月十一日

 成美からメッセージがきた。
『何日か悪いことばかりあって、怒ったことはごめん、事情を全部話すのもあれだと思ってこうやってメッセージ送るよ、翔太の服はどうしたらいい?宅配便で送った方がいいなら住所教えてね』
 関係が終わるとしても最後は笑って話したくて返信をした。
『話してくれてありがとう、俺も色々考えいていた。服は取りに行くね、でも、一度は話し合ってみたいけど、どう思う?』
 明後日の夜に会うことになった。

二〇二〇年八月十二日

 夜中に成美から電話が掛かってきた。外に出て通話ボタンを押すと、不機嫌な声で「男はなぜ皆んなセックスだけしたがるの、男は皆んな同じ、お前も同じだお前も」と怒ってきた。昨日から連絡は一切していなかったのに、急にどういう状況になったのか分からなかった。
「何かあった?辛いことでもあった?」
「八つ当たりしてるから黙ってて」
 10分ほど聞いていても理由は教えず、成美は言いたいことだけを吐く。喧嘩をすると会話で仲直りをするタイプだと言ったことが思い出されて、部屋に戻ってから長文のメッセージを書いて送った。
『明日話そう』
 何がしたいのか分からない。

二〇二〇年八月十三日

 成美の部屋の近くにあるバーで会った。謝ると予想していた成美は怒った。主な内容は2つ。
 1つ目、毛の掃除。成美は毛が見えることが大嫌いで除毛をし、髪の毛も見つける度にすぐ捨てるが、俺が泊まって帰ると毛が多くてムカつくということ。それで、俺にブラジリアンワックスを勧めたが、俺はその代わりに掃除をすると言ったのが気に入らなかったということ。頑張って掃除したが、成美の基準には達していなかったようだ。
 2つ目、イケメンになって欲しい訳ではないが、おしゃれをする努力と管理をすることが重要だと思っているということ。俺はおしゃれが好きな方ではあるが、額を隠すことと眉毛を剃ることは嫌いだった。成美は俺の眉毛を剃ってあげようとしていた時に断られて、俺に似合うスタイルを探して工夫した努力が無視されたと感じたと言った。もっと怒りながら、外で一緒にデートする時に恥ずかしくない見た目であって欲しい、私は今でもやろうと思えばイケメンとデートできると堂々と言った。そう言われたことは初めてだった。素直なのか俺を無視しているのか分からなかったが、そう考えているのに別れようとしていなかったことが不思議だった。一般的に、女性は体を利用することで自分より容貌や能力が優れている男性と遊べるという現実は教えないことにした。遊び以上は難しいというのが残念だが現実だ。成美がその現実を分からないとも思わなかったから言わなかったこともあった。
 俺の服装と体は好きだと言った人が急にこう言うのも面白い。会話が大事だと言った人が真剣な内容は避けて怒るばかり。容貌にコンプレックスがあると言った人が外見を指摘するばかり。成美は自尊心はないのにプライドが高い人が情けなくて嫌いだと言ったが、普段やっていることをみたらそれは彼女の特技である。どこまで話すのか気になり、俺は怒らず成美に合わせた。すると、この年にもなって割り勘をすることもストレスだと言った。これは俺も同じ意見であったから納得できた。1回は俺が奢って次回は成美が奢ってのデートは、図々しく振る舞っていても内心申し訳なかった。今日が最後だから俺の奢りにして終わろうと思った。成美は話したいことを言い尽くしたみたいだったから、お会計をする前にトイレに行ってくると言った。成美はそういう俺を止め、ここのトイレ汚そうだから家のトイレ使ってと言った。彼女の部屋に入るつもりはなかったのに、ワインを買ってもう一杯飲もうと誘われた。この時に分かった。成美は感情的であったから寛大になり、俺は理性的であったから包容できなかったことを。更に、成美は責めるために詭弁を弄しながら八つ当たりしていたが、今まで付き合った女とは違って俺の価値観自体を変えることが目的でなかった。ただ、口喧嘩で勝ちたくてあれこれ口に出しているだけだった。彼女と付き合った期間は短いが、性格が真逆であるから、その間に成美が苦労しただろう。俺も苦労したけど、このくらいは慣れているから平気だ。兎に角、それでもこの関係を続けようとする成美の態度から、これが肯定的な諦念であるのかという考えが思い浮かんだ。バーで働いていた時に吉田さんが話した異性関係で重要なこと。罅が入る音が聞こえてきた気がした。成美がより好きになってしまった。

 成美の部屋でワインを飲んだ。お互いの手が触れる度にぴりっとした。肴としてチュッパチャプスを食べさせようとしたら、成美は唇を締めて「暗証番号をお願いします」と言った。色々話してみたが誤答となり、目を閉じている成美の唇に飴を付けているまま悩み、初めて成美とキスをした日のように緊張した。少しぐずぐずした後、果敢にしたキスは快楽的な熱い幸せを与えてくれた。喧嘩の後にする和解のセックスの中毒になるカップルもいると聞いたが、キスをしただけでもその理由が分かった。ワインを飲み干してからはビールを飲み始めた。頭が複雑だったから無理して飲んでいたら、成美がキスをしてきて俺の口の中にあるビールを奪った。その勢いが格好良くてエロく、気持ち良かった。俺たちはまた絡み合ってから離れることなく夜明けを迎えた。
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