6話 どいつもこいつも
文字数 1,686文字
「……は? 」
アランの発言に首を傾げながら警官たちが銃口を下げる。しかし完全に安心してはいないらしく、うち一人が大声で叫んだ。
「特等錬金術師などおらん! 」
「それはいつの情報だ? 」
アランが静かに返すと、警官は即座に手帳に挟んであった小さな紙切れを取り出した。
「錬金術師の名簿は毎月更新される。ここに特等錬金術師の枠はない」
「あ、そうか昨日任命されたからまだ名簿に無いのか…… じゃあ軍人って事は認めてくれるの? 」
アランが問い返すと警官たちは静かに頷いた。
「だったらあいつの討伐は俺にさせてくれんかね? このままだとあんたらがひたすら死ぬだけなんだが? 」
警官たちが顔を見合わせる。その間にも『不死者 』は連れ去った人間を屠 っているのかポタポタと血が垂れる音がホールの静寂を包んでいた。
「……良いだろう、貴官に任せる」
随分上から物を言う、とは思ったがとりあえず被害が増えないことにアランは内心ホッとしつつ天井を見上げた。
「そこの『不死者』、お空に浮いて人拐 いばっかりしてないで降りてこいよ」
アランが煽ると、『不死者』はあっさりと降りてきた。しかし相変わらず目は血走っており、血が足りていないのは変わらない様子である。
「随分苦しそうだな。血が足りないのか? 」
先程撃たれた傷口は塞がってはいるが完全な治癒とまではいかず、所々に出血が見られている。アランがニヤリと笑った瞬間、『不死者』は空に飛び上がりアランに向かって急降下を始めた。
「避けろぉ!! 」
警官たちが叫ぶよりも速くアランは相手のタックルを見切り、一歩だけ下がり静かに衝突を回避していた。
「……おい、今あいつ避けたよな? 」
「マジかよ…… あいつも化け物かよ」
警官たちがざわつく。今度は『不死者』がニヤリと笑った。
「頬の皮が切れているぞ? 今のはまぐれか? 」
爪に付いたアランの血を舐める『不死者』。アランは頬の傷を撫で、口角を上げただけだった。
「御託 はいいから来いっつってんだろうが化け物よぉ…… 」
「貴様ァ…… 後悔するなよ!! 」
蝙蝠男が羽ばたく。先程よりも遥かに早い速度でアランに襲いかかった。ただ上からだけではなく壁を、天井を、梁を、柱を、ありとあらゆる物を使い、小刻みに向きを変えながら襲いかかる。
これには流石にアランが死んだと思い警官たちは銃を構え直したが、そのわずか数秒後に『不死者』は何もない空中でいきなり動きを止めた。
「なッ!? 」
警官たちが目を凝らす。蝙蝠男が空中で停止した理由は即座に理解できた。
「お前、壁を蹴った後の突進だけは直進攻撃だよな? 最初の一撃で動き自体は見切っていたがどうも掴みづらくてな、時間がかかった」
蝙蝠男の胸に、いつの間にかアランの手に収まっていた三日月刀 が突き刺さっていた。アランが「オラァァ!! 」の掛け声よろしく三日月刀を振り上げると、『不死者』の心臓より上の部分はあっという間に一刀両断され、蝙蝠男は力なく床に転がった。
「面倒な真似しやがって…… 」
アランが左手をかざす。すると指輪の宝石部分が怪しく光り、辺り一面を覆っていた血の海が全て指輪に吸い込まれていく。10秒もかからない内に先程までの凄惨な光景は跡形もなく消滅し、その場に残ったのはアランと警官たちだけになった。
「さて、俺の仕事はここまでだし、後は…… 」
アランがその場を立ち去ろうとしたその瞬間、警官たちは一斉に『アランに』狙いをつけて銃を構えた。
「……はァ!? なんのつもりで…… 」
「警官を一気に複数人殺害できるような怪物を瞬殺できるとなれば、貴様を危険人物扱いしても問題無いだろ? ただの任意同行だ」
がらんどうとなった駅舎と警官たちを交互に見やり、アランはオールバックに整えた髪を掻き乱した。
「アァーーッ!! 、ったくめんどくせぇな全くよぉ」
アランの発言に首を傾げながら警官たちが銃口を下げる。しかし完全に安心してはいないらしく、うち一人が大声で叫んだ。
「特等錬金術師などおらん! 」
「それはいつの情報だ? 」
アランが静かに返すと、警官は即座に手帳に挟んであった小さな紙切れを取り出した。
「錬金術師の名簿は毎月更新される。ここに特等錬金術師の枠はない」
「あ、そうか昨日任命されたからまだ名簿に無いのか…… じゃあ軍人って事は認めてくれるの? 」
アランが問い返すと警官たちは静かに頷いた。
「だったらあいつの討伐は俺にさせてくれんかね? このままだとあんたらがひたすら死ぬだけなんだが? 」
警官たちが顔を見合わせる。その間にも『
「……良いだろう、貴官に任せる」
随分上から物を言う、とは思ったがとりあえず被害が増えないことにアランは内心ホッとしつつ天井を見上げた。
「そこの『不死者』、お空に浮いて
アランが煽ると、『不死者』はあっさりと降りてきた。しかし相変わらず目は血走っており、血が足りていないのは変わらない様子である。
「随分苦しそうだな。血が足りないのか? 」
先程撃たれた傷口は塞がってはいるが完全な治癒とまではいかず、所々に出血が見られている。アランがニヤリと笑った瞬間、『不死者』は空に飛び上がりアランに向かって急降下を始めた。
「避けろぉ!! 」
警官たちが叫ぶよりも速くアランは相手のタックルを見切り、一歩だけ下がり静かに衝突を回避していた。
「……おい、今あいつ避けたよな? 」
「マジかよ…… あいつも化け物かよ」
警官たちがざわつく。今度は『不死者』がニヤリと笑った。
「頬の皮が切れているぞ? 今のはまぐれか? 」
爪に付いたアランの血を舐める『不死者』。アランは頬の傷を撫で、口角を上げただけだった。
「
「貴様ァ…… 後悔するなよ!! 」
蝙蝠男が羽ばたく。先程よりも遥かに早い速度でアランに襲いかかった。ただ上からだけではなく壁を、天井を、梁を、柱を、ありとあらゆる物を使い、小刻みに向きを変えながら襲いかかる。
これには流石にアランが死んだと思い警官たちは銃を構え直したが、そのわずか数秒後に『不死者』は何もない空中でいきなり動きを止めた。
「なッ!? 」
警官たちが目を凝らす。蝙蝠男が空中で停止した理由は即座に理解できた。
「お前、壁を蹴った後の突進だけは直進攻撃だよな? 最初の一撃で動き自体は見切っていたがどうも掴みづらくてな、時間がかかった」
蝙蝠男の胸に、いつの間にかアランの手に収まっていた
「面倒な真似しやがって…… 」
アランが左手をかざす。すると指輪の宝石部分が怪しく光り、辺り一面を覆っていた血の海が全て指輪に吸い込まれていく。10秒もかからない内に先程までの凄惨な光景は跡形もなく消滅し、その場に残ったのはアランと警官たちだけになった。
「さて、俺の仕事はここまでだし、後は…… 」
アランがその場を立ち去ろうとしたその瞬間、警官たちは一斉に『アランに』狙いをつけて銃を構えた。
「……はァ!? なんのつもりで…… 」
「警官を一気に複数人殺害できるような怪物を瞬殺できるとなれば、貴様を危険人物扱いしても問題無いだろ? ただの任意同行だ」
がらんどうとなった駅舎と警官たちを交互に見やり、アランはオールバックに整えた髪を掻き乱した。
「アァーーッ!! 、ったくめんどくせぇな全くよぉ」