4話 我は行く
文字数 2,012文字
にべもなく殺された同胞の死体と、手に付いた血糊を振り払うアランを見て、『不死者 』たちは構えを解いた。アランが槍を水平に構え、『不死者』の群れに迫る。
「さて、抵抗して死ぬか自分から首を差し出すか選べ。今なら本気は出さん」
「俺たちが? 人間風情に? 笑わせるな」
再び構える『不死者』たち。そのまま全員が力み始めると筋肉が隆起し服が弾け、残る9体の『不死者』たちは真の意味で人ならざる姿に変貌した。
「自分のした事をあの世で後悔しやがれぇ!!!! 」
残る『不死者』たちが一斉に飛びかかる。その動きを受けてアランは槍を手離した。すると槍はまるで砂でできていたかのように崩れ、あっという間に消えていった。
「貴様らこそ、人間に造られたのを良いことにわがまま三昧したのを後悔するんだな」
アランが呟いた次の瞬間には赤い渦巻きのようなものが彼の右手を飲み込み、大鎌 の形になる。アランが大鎌を手に取り薙ぎ払うと、5体の『不死者』の首が同時に地面に落下した。
「こ、こいつ…… 」
「で、首を差し出してくれるのか? 」
体中血塗 れとなったアランが自分を飛び越して着地した生き残りたちを睨む。その姿は『不死者』ですら恐怖を禁じ得ないもので、生き残りたちは一目散に玄関口に向かって走り始めた。
「し、死にたくねぇ!! 」
「嫌だぁぁ!! 」
腰が抜け、這いつくばる『不死者』たち。しかしアランは彼らに情をかけるような事はしなかった。大股で歩きながら彼らの背後に迫り、大鎌の刃を心臓に突き立てて回る。
「さて、お前が最後の一体になるわけだが…… 」
「勘弁してくれぇ…… もうここには来ないから許して…… 」
指を組んで嘆願する『不死者』を見下ろすアラン。彼の目にはまるで感情を放棄したかのような虚無感が宿っていた。
「既に言ったが生憎こっちは仕事でな、お前らがどうしようが関係ない」
再び右手を相手の胸に突っ込むアラン。最後の一体の心臓を握り潰した時には、既に辺り一帯がまるごと血と肉片に覆われていた。
「さて、掃除するかね」
指輪を左手中指にはめるアラン。血溜まりに向かって宝石部分を突き出すと、一帯の血を余すことなく吸い上げた。
─────────────────────
応援部隊に事後処理を任せ、アランはクロウドを含めた政府閣僚たちと面談していた。
「7年ぶりとは思えない鬼神の活躍、流石はリー=ブラウン少佐だな」
クロウドが口を開く。アランが何かを察したように頭を下げると、閣僚たちは一斉にため息をついた。
「議長、彼のような人材をなぜ投獄していたのです? 」
法務省のバッジをつけた閣僚の一人が口を開く。恐らく法務大臣なのだろう。すぐにクロウドが反論した。
「彼は『不死者』に対抗するため、『不死者』に使用しているものと同じ術式を肉体に染み込ませてある。君だってあの活躍を見てもらわん限りは彼が『不死者』ではないと信じなかっただろう? 」
「ま、まぁそれはそうですが…… 」
法務大臣が口を閉じると、今度は警察の制服を着ている男が机を叩いて抗議した。
「なぜ彼は軍属なのです! 人の前で捕り物なり討伐を行うのですからせめて警察官でないと…… 」
「それは…… 」
「警視総監として進言します。彼…… アラン殿は警察所属にすべきです」
クロウドが言葉に詰まる。するとアランが立ち上がって警視総監に詰め寄った。
「馬鹿かてめぇは? 」
「なんだと? 」
「大体警察はどうやって『不死者』と戦う? 錬金術師の戦闘レベルは? 一般警官の対『不死者』用装備の調達は? 」
今度は警視総監が押し黙る。アランはあきれた顔で警視総監を見下ろし、吐き捨てるように呟いた。
「警察と軍が実績争いをしようが、どっちが『不死者』撲滅の扇動をしようが俺には関係ない。ただし、上官が支配欲と出世欲で動くような組織には所属する気はさらさら無いからそのつもりでいな…… それでは、小官は次の任務があるのでこれで失礼します」
扉を閉じる音が議場に響き渡る。クロウドが大きくため息をついた。
「あれがこの国最強の存在よ。誰も御せぬ」
─────────────────────
クロウドたちへの謁見を終えたアランは荷物をまとめて駅へと向かった。既に駅の照明は落ちており、各改札口にひっそりと門衛が待機しているだけである。軍用列車用のホームへ繋がる改札口に待機していた門衛に身分証を見せる。
「リー=ブラウン少佐ですね。ルクルッド行きの手配車は四番ホームです。8号車を貸し切りにしておりますのでごゆっくり」
「おう」
小さな旅行鞄を抱えて、アランは明かりのない暗闇の中に消えていった。
「さて、抵抗して死ぬか自分から首を差し出すか選べ。今なら本気は出さん」
「俺たちが? 人間風情に? 笑わせるな」
再び構える『不死者』たち。そのまま全員が力み始めると筋肉が隆起し服が弾け、残る9体の『不死者』たちは真の意味で人ならざる姿に変貌した。
「自分のした事をあの世で後悔しやがれぇ!!!! 」
残る『不死者』たちが一斉に飛びかかる。その動きを受けてアランは槍を手離した。すると槍はまるで砂でできていたかのように崩れ、あっという間に消えていった。
「貴様らこそ、人間に造られたのを良いことにわがまま三昧したのを後悔するんだな」
アランが呟いた次の瞬間には赤い渦巻きのようなものが彼の右手を飲み込み、
「こ、こいつ…… 」
「で、首を差し出してくれるのか? 」
体中
「し、死にたくねぇ!! 」
「嫌だぁぁ!! 」
腰が抜け、這いつくばる『不死者』たち。しかしアランは彼らに情をかけるような事はしなかった。大股で歩きながら彼らの背後に迫り、大鎌の刃を心臓に突き立てて回る。
「さて、お前が最後の一体になるわけだが…… 」
「勘弁してくれぇ…… もうここには来ないから許して…… 」
指を組んで嘆願する『不死者』を見下ろすアラン。彼の目にはまるで感情を放棄したかのような虚無感が宿っていた。
「既に言ったが生憎こっちは仕事でな、お前らがどうしようが関係ない」
再び右手を相手の胸に突っ込むアラン。最後の一体の心臓を握り潰した時には、既に辺り一帯がまるごと血と肉片に覆われていた。
「さて、掃除するかね」
指輪を左手中指にはめるアラン。血溜まりに向かって宝石部分を突き出すと、一帯の血を余すことなく吸い上げた。
─────────────────────
応援部隊に事後処理を任せ、アランはクロウドを含めた政府閣僚たちと面談していた。
「7年ぶりとは思えない鬼神の活躍、流石はリー=ブラウン少佐だな」
クロウドが口を開く。アランが何かを察したように頭を下げると、閣僚たちは一斉にため息をついた。
「議長、彼のような人材をなぜ投獄していたのです? 」
法務省のバッジをつけた閣僚の一人が口を開く。恐らく法務大臣なのだろう。すぐにクロウドが反論した。
「彼は『不死者』に対抗するため、『不死者』に使用しているものと同じ術式を肉体に染み込ませてある。君だってあの活躍を見てもらわん限りは彼が『不死者』ではないと信じなかっただろう? 」
「ま、まぁそれはそうですが…… 」
法務大臣が口を閉じると、今度は警察の制服を着ている男が机を叩いて抗議した。
「なぜ彼は軍属なのです! 人の前で捕り物なり討伐を行うのですからせめて警察官でないと…… 」
「それは…… 」
「警視総監として進言します。彼…… アラン殿は警察所属にすべきです」
クロウドが言葉に詰まる。するとアランが立ち上がって警視総監に詰め寄った。
「馬鹿かてめぇは? 」
「なんだと? 」
「大体警察はどうやって『不死者』と戦う? 錬金術師の戦闘レベルは? 一般警官の対『不死者』用装備の調達は? 」
今度は警視総監が押し黙る。アランはあきれた顔で警視総監を見下ろし、吐き捨てるように呟いた。
「警察と軍が実績争いをしようが、どっちが『不死者』撲滅の扇動をしようが俺には関係ない。ただし、上官が支配欲と出世欲で動くような組織には所属する気はさらさら無いからそのつもりでいな…… それでは、小官は次の任務があるのでこれで失礼します」
扉を閉じる音が議場に響き渡る。クロウドが大きくため息をついた。
「あれがこの国最強の存在よ。誰も御せぬ」
─────────────────────
クロウドたちへの謁見を終えたアランは荷物をまとめて駅へと向かった。既に駅の照明は落ちており、各改札口にひっそりと門衛が待機しているだけである。軍用列車用のホームへ繋がる改札口に待機していた門衛に身分証を見せる。
「リー=ブラウン少佐ですね。ルクルッド行きの手配車は四番ホームです。8号車を貸し切りにしておりますのでごゆっくり」
「おう」
小さな旅行鞄を抱えて、アランは明かりのない暗闇の中に消えていった。