7話 触れてはいけない絶対線
文字数 1,703文字
駅の騒動から二時間後、アランはルクルッドの暖かい日光を浴びることなく警察署の取調室に放り込まれていた。
「おいっ! 任意同行なんだから昼飯くらい食わせろや!! 」
「警官に歯向かうか? 公務執行妨害で逮捕するぞ? 」
アランと警官のやり取りはもはや喜劇の域に達していた。事情を説明しても全て「結局殺人は認めるんだな? 」と返され、『不死者 』の説明をすると「お伽噺話は寝てから頼む」と言われる始末であったのだ。
「この際『不死者』は信じなくてもいいから、俺が殺人をしていない事だけ信じてくれって」
「知ったことか。黙ってここにいろ」
「はぁ〜〜っ、じゃあさっさと議会に繋ぐか軍の基地長呼ぶかしてくれよ! らちが空かんだろうがこんなもん!! 」
「黙れと言うのが聞こえんかぁ!! ここは警察署、軍隊といえども大きな顔をすんな!! 」
その時点でアランは今自分を取り調べている刑事の思考回路と頭の程を悟った。頭の悪い馬鹿には何を言っても通じないのは重々承知の上なので、言われるがままに殴られることにした。
「貴様ァ〜〜、なんとか言わんかぁ!! 」
刑事が次の拳を振り上げようとしたその時、取調室のドアが荒々しく開き数人の警官たちが入ってきた。制服に付いている記章から伺う限り、彼らはかなりの高官のようだった。
「大変失礼致しましたリー少佐…… ん?その傷はどうなされましたか? 」
高官たちが敬礼したその姿を見て、自分を取り調べていた刑事は青ざめた。高官たちの質問を聞いてこの世の終わりが来たようにカタカタと震え始めた。
「事実を説明しろと言うから説明したんだがね、信じてもらえず逆ギレされたのさ。今回は私が煽ったところもあるからそう咎めなくて結構」
「はっ、誠に申し訳ない。少佐の任務に関する情報が先程全警察署に一斉に通達されましたので、こやつはまだ知らん情報なのです。どうかお許しを…… 」
恐らく署長であろう初老の男が頭を下げる。刑事は既に腰が抜け、下手をすると泡を吹きそうな程に狼狽している。
「いやいや、こいつの拳じゃ俺の体に傷は付けれませんから。それでは失礼するよ」
高官たちに静かに脱帽敬礼を返し、アランは警察署を後にした。
─────────────────────
朝一番で基地に到着するはずが、大幅に遅れて気づけば日が沈もうとしていた。アランはあの後も警察署で色々やっていたため、基地に来たときには既に両手が塞がっており、基地長室に挨拶伺いをたてられたのはほぼ日没後の事であった。
「そいつは、また中々な事に巻き込まれてましたな」
陸軍ルクルッド基地長、アーネスト=ホーガンが大きく肩を揺らして笑った。アランは多少疲れた顔をしつつ微笑みながら返す。
「まー、欲しい資料はもらえましたからある意味満足なんですがね」
「結果オーライって訳か。その資料ってのはその報告書の束か? 」
「えぇ、向こうの刑事さんがぶん殴ってくれたおかげであっさり出してくれました」
応接用のテーブルに仮置きしてあった紙の束をデスクに差し出すアラン。アーネストは即座に目を通し、その内容をほぼ間を置かずに理解した。
「ははぁ、錬金術にかこつけて『不死者 』どもはこんなものを買っていた訳か、中々ナメた真似をしやがる」
全ての書類に目を通したアーネストが静かにデスクに膝を付いた。
「捜査協力は仰げたのか? 」
「えぇ。一通りの人員は出してくれるそうです。一般人への逮捕権は警察の特権のようなものですから」
アーネストがアランに資料の束を返すと、アランは静かに脱帽敬礼した。アーネストも続いて脱帽敬礼し、お互いにニヤリと口角を上げた。
「明日には国民に全ての情報が出るように政府が手配するようです。いよいよですな」
「だと良いんですが。退路を絶たれたと勘違いした『不死者』が暴動を起こさなけりゃ良いんですが…… さて、私はこれにて失礼します」
アランは再度頭を下げ、静かに基地長室を後にした。
「おいっ! 任意同行なんだから昼飯くらい食わせろや!! 」
「警官に歯向かうか? 公務執行妨害で逮捕するぞ? 」
アランと警官のやり取りはもはや喜劇の域に達していた。事情を説明しても全て「結局殺人は認めるんだな? 」と返され、『
「この際『不死者』は信じなくてもいいから、俺が殺人をしていない事だけ信じてくれって」
「知ったことか。黙ってここにいろ」
「はぁ〜〜っ、じゃあさっさと議会に繋ぐか軍の基地長呼ぶかしてくれよ! らちが空かんだろうがこんなもん!! 」
「黙れと言うのが聞こえんかぁ!! ここは警察署、軍隊といえども大きな顔をすんな!! 」
その時点でアランは今自分を取り調べている刑事の思考回路と頭の程を悟った。頭の悪い馬鹿には何を言っても通じないのは重々承知の上なので、言われるがままに殴られることにした。
「貴様ァ〜〜、なんとか言わんかぁ!! 」
刑事が次の拳を振り上げようとしたその時、取調室のドアが荒々しく開き数人の警官たちが入ってきた。制服に付いている記章から伺う限り、彼らはかなりの高官のようだった。
「大変失礼致しましたリー少佐…… ん?その傷はどうなされましたか? 」
高官たちが敬礼したその姿を見て、自分を取り調べていた刑事は青ざめた。高官たちの質問を聞いてこの世の終わりが来たようにカタカタと震え始めた。
「事実を説明しろと言うから説明したんだがね、信じてもらえず逆ギレされたのさ。今回は私が煽ったところもあるからそう咎めなくて結構」
「はっ、誠に申し訳ない。少佐の任務に関する情報が先程全警察署に一斉に通達されましたので、こやつはまだ知らん情報なのです。どうかお許しを…… 」
恐らく署長であろう初老の男が頭を下げる。刑事は既に腰が抜け、下手をすると泡を吹きそうな程に狼狽している。
「いやいや、こいつの拳じゃ俺の体に傷は付けれませんから。それでは失礼するよ」
高官たちに静かに脱帽敬礼を返し、アランは警察署を後にした。
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朝一番で基地に到着するはずが、大幅に遅れて気づけば日が沈もうとしていた。アランはあの後も警察署で色々やっていたため、基地に来たときには既に両手が塞がっており、基地長室に挨拶伺いをたてられたのはほぼ日没後の事であった。
「そいつは、また中々な事に巻き込まれてましたな」
陸軍ルクルッド基地長、アーネスト=ホーガンが大きく肩を揺らして笑った。アランは多少疲れた顔をしつつ微笑みながら返す。
「まー、欲しい資料はもらえましたからある意味満足なんですがね」
「結果オーライって訳か。その資料ってのはその報告書の束か? 」
「えぇ、向こうの刑事さんがぶん殴ってくれたおかげであっさり出してくれました」
応接用のテーブルに仮置きしてあった紙の束をデスクに差し出すアラン。アーネストは即座に目を通し、その内容をほぼ間を置かずに理解した。
「ははぁ、錬金術にかこつけて『
全ての書類に目を通したアーネストが静かにデスクに膝を付いた。
「捜査協力は仰げたのか? 」
「えぇ。一通りの人員は出してくれるそうです。一般人への逮捕権は警察の特権のようなものですから」
アーネストがアランに資料の束を返すと、アランは静かに脱帽敬礼した。アーネストも続いて脱帽敬礼し、お互いにニヤリと口角を上げた。
「明日には国民に全ての情報が出るように政府が手配するようです。いよいよですな」
「だと良いんですが。退路を絶たれたと勘違いした『不死者』が暴動を起こさなけりゃ良いんですが…… さて、私はこれにて失礼します」
アランは再度頭を下げ、静かに基地長室を後にした。