(二)-7

文字数 319文字

 松橋明は前回の栃木での撮影で受けた傷もほぼ癒えた状態で東京湾の玄関口となる安房館山にやってきていた。
 今回は『川村美砂サスペンス劇場・那須高原湯けむり密室連続殺人事件・鬼塚刑事の事件報告書32』の撮影のためだった。
 明は仕事のオファーが来た時にその小説を読んだ。冒頭の重要なシーンに崖から車が落ちるというのがあり、今回その撮影のスタントマンとして呼ばれたのであった。
 今回の作品は那須高原が舞台のはずなのに、なぜか千葉県の南端に撮影に来ていた。そのため事前にその旨を監督に聞いてみたところ、「崖の下が川なのか海なのかで危険度がまるで違う」ということであった。撮影するにあたっては安全を配慮していることはありがたいことではあった。

(続く)
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