(二)-9

文字数 322文字

 ただ、明は自分のボディコントロールについては演技と同じく自信があった。
 とはいえ、今回は崖から海に車ごと飛び込むという難易度の高い撮影だ。しかも役作りのため背広とカツラを着用しなくてはならなかった。
 その上撮影はリハーサルなしのぶっつけ本番だった。崖の下に車を落とすリハーサルなんぞできるわけがない。しかも海に沈む車から脱出する練習もできない。
 さらに空気のあぶくを立てながら海に沈み行く車のシーンも撮ることになっていたので、車が海に沈んでもすぐに脱出できるわけではない。沈みきったところでカメラの撮影範囲から出たところまで泳いでいってから水面に顔を出さなければならない。今まで挑戦してきたスタントの中でも飛び抜けて危険度が高かった。

(続く)
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