(二)-3

文字数 377文字

 甲高い金切り声を上げてまだ四分の一も味わっていないドリンクを飲む楽しみを奪われたことに怒りの声を上げる若手女優を尻目に、監督は怒鳴り声を上げて撮影班に予備のレンズを取り付けるように指示していた。
 このとき松橋明は撮影班よりも爆発地点に近かったこともあり、頭にはこぶができ、体中にアザができた。痛みがないことはなかったが、耐えられないことはなかったし、骨が折れるほど酷い傷にはならなかった。とはいえ、念のため撮影隊と一緒に来ていた「救護チーム」の役割をも果たすようにと言いつけられた雑用係の若手スタッフに傷を見てもらった。傷はあざができる程度ではあったが、場所により擦り傷などもできており、念のため消毒薬で傷口を手当してもらった。
 明は、この作品が放送された当初から、この作品のスタントを務めてきた。しかし、今回のようなトラブルは今までなかった。

(続く)
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