去年の夏、とつぜん(承前)

文字数 260文字

 すべらかに400階からすべらかに降下するエレベーター。
 女性人形と外に踏みだすと、街路には水溜りのようなものがいくつかできている。雨は夏の強い陽射しに蒸発していたが、溜まりは蜜のように金色に輝いて消えずにいる。見えざる手によって引き上げられ、連れ去られて天空に招かれた人間たちが融かされて、その肉体も魂も密のような粘度の液体となって地上に降ってきたものだった。すがた形をまるっきり別様に変えてもどってきたものが、散在するゴールドの水溜り(蜜だまり)となっているのだった。
 空のむこうに何があるのか、まだわかっていない。
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