ハロウィン

文字数 490文字

 木が多すぎたのでした。
 混雑した樹木は互いにこすれて発火し、裸の女を大勢焼きました。人間が焼ける匂いは、かぼちゃを目覚めさせたのです。
 かぼちゃは着る物すべて質に入れてしまって、やはり裸でした。しかしかぼちゃは野菜ですから、寒ささえ我慢すれば服がなくとも問題ないのです。
 かばちゃは常日頃から歩くのに難渋しています。なにしろ足といえそうなものが、ないのですから。
 かぼちゃは火事場まで、燃え盛る森までなんとかして、足もないのに歩いていきました。
 朝まで待って、お日様が冷たい空に顔をだしたころ、焼けた女たちの、それでもいちばん見映えのいい脚を拾い、自分の底に刺しました。
 骨はたいそう熱かったので、かぼちゃは、さながらチンされたように、おいしそうな火のとおりぐあいとなったのです。
 カラスが五羽ほどもやってきて、かぼちゃをつつきました。ふたつ穴があき、今までは勘にたよるばかりだったかぼちゃに、目ができたのです。
 よろこびいさんで家に帰りました。はじめて目にした妻は人間でした。色白の乙女です。
「夢がかなった」と妻は泣きました。「渋谷はダメだから、今夜は歌舞伎町にいきましょう」
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