第五回 休講/のみものがたり
文字数 1,190文字
ウルスラさんは一息にビールを飲みほした。
右近のこのイメージは、イエスが水をぶどう酒に変えた奇蹟や、最後の晩餐においてぶどう酒をイエス自身の血であると十二使徒に与えたことに由来する。
ビールとキリスト教については、ベルギーのトラピスト会派の修道院で作っているトラピストビールは日本でも有名ですね。
修道院でのビール醸造が始まったのは、生水が不衛生な時代の安全な飲料として奨励されたという説や、学力レベルの高かった修道士がビール醸造の知識を持っていたから、といった説がありますね。
特徴的なのはワイングラスのような聖杯型のグラスで飲むところ。ベルギービールを出すお店なら大抵シメイやオルヴァルといったメジャーどころは揃えていますね。日本のビールに比べて重厚でしっかりした風味ですが是非どうぞ!
右近は饒舌になるウルスラさんの飲酒をたしなめる意味を含めて話を持ち出した。
19世紀のイギリス人旅行家イザベラ・バードも敬虔なクリスチャンだったそうだが、彼女が残した日本旅行記に日本人女性が飲酒して酩酊している様が否定的に描写されているのは当時のイギリスにこういう背景があったのかもしれない。
高山右近は茶の湯を確立させた千利休の高弟の一人であり、後年には利休の弟子として代表的な「利休七哲」の一人とされている。
利休の妻や家族はキリシタンだったと言われ、濃茶という同じ器で回し飲みをする作法はミサのワインの回し飲みの文化に似ていることから、そういう説を唱える人も居る。
ただし、利休本人がキリシタンであったという記録はなく、これはあくまでも真偽のわからない歴史ロマン。
しかし右近と同じ利休七哲は三人がキリシタンであり、同時代のキリシタンには受け入れられやすいものであったことは間違いない。