第一回 聖ウルスラの奇蹟

文字数 1,224文字

記念すべき第一回は私、ウルスラ先生です!イェーイ!ぱちぱちぱち!

 無理やりなテンションで第一回の奇蹟講習が始まった。

きっつい…
 右近はウルスラさんのテンションに若干引いている。
私、ウルスラ先生は実在の人物だということの裏付けはありません!
はあ、いきなりはっちゃけましたね…
 現代において、ウルスラさんは実在性が疑問視され、伝説上の人物であるということが定説となっている。
一応、設定上ではアジアの遊牧民族であるフン族が東ローマ帝国を侵略した時に殉教したことになっているので、4、5世紀あたりの人であるとされています
設定って言った…

 右近は自分でそういう設定だと言い放ったウルスラさんの実在性をいぶかしがった。

私はイングランドのとある地域のお姫さまでしたが、異教徒の王子に結婚を迫られて王子の改宗を条件にお嫁さんになることになりました。
へえ…良い身分の生まれだったんですねぇ
そして旦那に洗礼を受けさせるためにローマ巡礼したところ、現在のドイツのケルンでフン族に包囲されて矢で射られて死んでしまった、という悲劇のヒロイン的な生涯だったわけですね
それは災難でしたね
さて、私の聖人認定の根拠は殉教ですが、私にもひとつ自慢できる奇蹟があります
それはぜひ参考にさせていただきたい!
ブリテンから船出した私とお伴の1万人は出向してすぐ嵐に遭遇したのですが…
ほう…さては無事だったのですか?
嵐のおかげで船が超スピードで進んでたった1日で船旅が終わってしまいましたとさ!ラッキー!
なるほど…確かにそれはすごいですね

 こうしてヨーロッパ大陸ガリアの港に到着したウルスラさん一行はローマ巡礼の旅を続けるのだが、不運にも1万人を超えるお伴のみなさまもろともフン族の襲撃を受けてその命を落としてしまうのであった。

こういった天候操作は奇蹟の中でも割とポピュラーなものですね。右近さんも身体中に風を集めたりなんとかしたりして嵐を巻き起こしてみてはどうでしょうか?
嵐、と言っても大抵は迷惑なことになるのでは…?近年日本では大雨による被害が頻発しているようですし…基本的に災害にしかならないように思いますが
そうですね、では災害にならない程度、局地的短時間で嵐を起こしてみるのはどうでしょうか。例えば…甲子園球場とか
すごいピンポイントな指定ですね…
ちょうどですね、私の名を冠した高校が逆転されてピンチなので、試合を、なかったことにしたかったり
必死で頑張っている高校球児の一方に肩入れするために奇蹟を行使するのはどうかと…

 高山右近は人格者として知られ、その性格から秀吉からの信任も厚かったのだ。その右近が人に迷惑をかける奇蹟を行使することなどありえない。

チッ…!
……

 ウルスラさんは悔し気に舌打ちをしたが、人格者の右近は微笑みを浮かべて聞き流した。

 なお、2017年夏に行われた第99回全国高等野球選手権大会は数多くの奇蹟やドラマを残したが、その奇蹟やドラマに聖人は関与しなかったという。

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登場人物紹介

戦国武将 高山彦五郎重友。通称 高山右近。(1553~1615)

2016年にその生涯が評価されバチカンに福者認定を受け列福したキリシタン大名。


神の奇蹟により現代に復活し、聖人になるため勉強する。

聖ウルスラ。


聖人を目指す高山右近に聖教育を施す教師の守護聖人。

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