第三回 きんのたまおじさんの奇蹟
文字数 1,663文字
教室ではいつものようにウルスラさんによる聖教育が行われていた。
……と、いうわけでミラの司教ニコラスは女の子たちにきんのたまをプレゼントしたのでした
失礼ですね、聖ニコラスさんはあまた居る聖人でも好感度ランクトップランカー(ウルスラ調べ)の方ですよ
ええ、大人から子供まで……一部、独身の男女から蛇蝎のごとく嫌われているのを除いては……大人気ですよ?
ミラの司教ニコラス。クリスマスに子どもたちへプレゼントを配るサンタクロースのモデルとなった聖人である。
聖ニコラスは3~4世紀の人、現在のトルコの位置にあたるリキアのミラで大主教を務めた。弱者や貧民を救済し、無実の罪で罰されようとする市民や将軍を救うなど広く尊敬を集めている。
先にウルスラさんが紹介していたエピソードは、貧しい家の窓や煙突にきんのたま(金貨が詰め込まれた玉のようになった袋、とも)を放り込んでその家の娘たちを救った、というお話で、サンタクロースの元となった逸話である。
そんな彼ですが、『奇蹟者聖ニコライ』の異名を持つほどの奇蹟のバーゲンセールな方です
右近は極めて日本人的な感心の仕方をした。弘法大師も奇跡のエピソードがバーゲンセールなほどに事欠かないが、それはまた別途個別にお調べ願いたい。
最もインパクトのあるお話はアレでしょう、『三人の子ども』のエピソードですね。あれはすごいですよ。あるお肉屋さんが三人の子どもを誘拐して殺し、食べるために塩漬けにしたのですが
七年後にニコラスさんがその肉屋に行って、子どもが塩漬けにされていた樽に触れたら何事もなかったかのように三人の子どもが生き返ったといいます。肉屋も罪を悔いて改心してめでたしめでたし、といったところですね。
こういったエピソードからニコラスさんは子どもの守護聖人でもあります
他にも特に面白くないエピソードですが、嵐を止めたり、嵐で沈みそうになっている船を救ったり、食糧難で困っている港町を助けるために皇帝の船から小麦をちょろまかしたりと海運の守護聖人でもあるのですよ
その点は大丈夫です。ちょろまかした小麦は奇蹟で元の重さになっていたのですから
なるほど、食べものを増やす奇蹟というのは良いですね。皆が幸せになれますから
…(コメントしないでおこう)。
レオンのご先祖が持っていたという無限にお米を増やす道具がレオンに伝わっていればレオンも奇蹟を起こして福者になれたのだろうか…
右近のマブダチの蒲生氏郷(洗礼名レオン)のルーツ藤原秀郷(通称 俵藤太)は無限に米が湧く米俵や、一瞬でお米が炊ける釜、矢が避ける鎧など不思議アイテムをたくさん所持していたことで知られる。
右近は自分が看取った親友のことを思い出して少しセンチメンタルな気分になった。
困っている人を助ける、私もニコラスさんのようにありたいと思います!
ウルスラさんは話して良かったと満足してにこにこしながら頷いた。
ところで、是非ニコラスさんにお会いしたいと思うのですが、どちらにいらっしゃるので…?
本日のゲストとしてお招きしているのですが…おかしいですね。ちょっと連絡を取ってみますね
ご無沙汰しております、ウルスラです。……ええ……はい……そうでしたか……それは仕方ありませんね……
公園で女の子にきんのたまをプレゼントしたら通報されて不審者としておまわりさんに連れて行かれたって
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