第２８話

ど、どうしよう……。こんな究極の2択みたいなの人生初だよ。
「渡さなかったらどうなるんですか？」
「そうですね……。この人たちにボコボコにしてもらいます。」
スーツの男の後ろにいる男の人達が、不気味ににこって笑った。え、笑顔は好きだけどこんな笑顔は好きじゃないよ……。
「くるみ。」
浩平さんが私を振り返る。その目には焦りが滲んでいた。浩平さんは本当は怖くて、焦ってるん
だ。どうしよう！私はどうしたら……。
「焦るな。交番まで走れ。あいつらは俺がここで止めとくから。分かったか？」
「何をこそこそと話していらっしゃるのですか？」
浩平さんが私にだけ聞こえるように話す。浩平さんを置いていけって事？そんなの無理だよ。
「ダメ。何かいい案を……。」
「合図したら行け。」
浩平さんは私の話も聞かずに体の向きを変えると、男と睨みあう。そして……。
「今だ！行け！」
「でも！」
「行け！行くんだ！」
浩平さんに押し出される。こんなの違う！けど
「両親と俺の妹を救ってくれ。」
なんて言われたら、足を止める事なんて出来ない。
「待ちなさい！追いかけろ！」
私の足だってそんなに遅くない。でも、鍛え上げられた成人男性の足の速さには負ける。ダメ！捕まる！