第29話

文字数 585文字

「くるみ!」
「え?」
捕まると思って閉じた目を、ゆっくり開く。そこには……。
「店長!」
私の方に延ばされた手を、店長が掴んでいた。私を追いかけてきた男は、店長のいきなりの登場に、驚いてた。目まんまるになってるよ~!
「店長何でここに?」
「何でもいいだろ。それより、うちの大切なくるみに手を出したら、許さないからね。」
店長は静かに言うと、男の手を投げ捨てるように離す。
「またお仲間ですか?鬱陶しいですね。」
スーツの男は、呆れたように店長を見る。でもそんな事より……。
「浩平さんを離して!」
浩平さんは、スーツの男の隣で、取り押さえられていた。
「申し訳ないですが、それは出来ません。あなたがそのスマホを渡せば話は別ですけど。」
くっ!そんなの卑怯だ!スマホを握りしめる。浩平さんを助けなきゃ!でも、両親も助けなきゃ。どうすればいいの?
「くるみ、行け。」
「迷ってるんですね?ではくるみさん、これでどうでしょうか。」
スーツの男が目線を店長に移した。次の瞬間……
「おい!何するんだい!」
「「店長!」」
「動くな!」
店長が男に両腕を掴まれ、取り押さえられる。スーツの男は口角を上げて、にっこり笑った。
「さあ、スマホを渡してください。渡さないとどうなるかはお分かりですよね?」
店長も浩平さんも私の大切な人。守らなきゃ。助けなきゃ。
「くるみ、止めろ!」「くるみ、行きなさい!」「くるみさん、ほら。」
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登場人物紹介

花森くるみ

両親がいない女子高生。

安上彩子

カフェ『エスポワール』を経営している。くるみを引き取る。

山影浩平

カフェの常連さん。くるみを助けた人。

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