諦めることを、諦めた男
文字数 1,228文字
どこか遠い目をして、そんなことを語る
慎之介が知らない世界で、一体何を見て来たのだろうか。
物憂げな表情をしていた
事態の異変を察したサムエラは、 石像の方を向きながら後ずさる。
アァァァァァァァァァッ
石像の後ろ、その空は、霊体のように透き通った、怨念が込められた女の巨大な顔で覆い隠されていた。
それまでの物憂げな表情は
アァァァァァァァァァッ
空を覆う巨大な霊体、それはまさしく女の顔を形づくっている。
半透明でありながら、色濃く影を持つその輪郭、その顔付きは極めて険しく、
この通常では有り得ないようなサイズも、女の怨念と憎悪、怒りが、今なお肥大化し続けていることの現われであろうか。
後ずさるサムエラに指示する愛倫 。