ロザーナの兄・ローレンツォ
文字数 1,924文字
鬼族の若者達は徒党を組んで一派をつくり、鬼族の筆頭名家であるオガーナ家の血を引くジュリアーノは、そうした同族の若者達をまとめるリーダー的存在へと成長していた。
同様に、竜人族にもまた血の気が多い若年層で構成された組織があり、その代表の座に君臨するのが、ロザーナの兄にあたるローレンツォ・ドラグーア。
竜人族の盟主ドラグーア家と、鬼族筆頭のオガーナ家の対立は、こうした若い世代までをも巻き込んでいた。
血気盛んな両族の若者達ゆえに、小競り、喧嘩、乱闘などは日常茶飯事、両族の揉め事はいつも絶えない。
だがそもそも、サキュバスの
そして、こうした揉め事が起こると、双方が仲間を呼んで真向から正面衝突、大勢対大勢の大乱闘になるのが常でもあった。
そこは、日本の若者達、ヤンキー辺りとやっていることは大差がない。
無益な争いを決して好まず、内心では平穏な暮らしを願っていたジュリアーノではあったが、鬼族筆頭オガーナ家の血を引いた子であるという立場上、徒党のリーダーとして仲間を引っ張って行くというのは、その血に定められた役割、宿命と言ってもいい。
その立場を放棄すれば、自らが臆病者の
それと同時にジュリアーノの中には、とにかく血の気が多く短気で喧嘩っ早い鬼族、その同年代の仲間達が暴走し過ぎないようにコントロールしようという思惑もあった。
両族の若者達による小競り合い、それがどんなに大規模なものになろうとも、武器等は一切使わない、素手での力勝負のみ。
いくらまだ年端も行かない少年達といえど、みんな分かってはいたのだ。
両族の争いで、どちらかに死者が出た時が最期。
それが例え、大人であろうと子供であろうとも、両家の間での、血で血を洗う果て無き抗争、報復合戦、全面戦争の引き金となるということを。