もう二度と目を覚ますことのない女
文字数 2,124文字
病室のベッドで寝ている美しい女、酸素マスクをして目を閉じ眠り続けている。
おそらくもう二度と彼女が目を覚ますことはないだろう。
これが先程まで大暴れしていた生き霊の本体であるとはとても思えない程に穏やかな安らぎに満ちた顔で眠っている。
その顔に暗い影を落とした
その看護師は医療スタッフの衣装というよりは修道女のような衣装を身に纏っている。
彼女は
簡単に言ってしまえば、いつの時代でもどこででも見られた悪い男に騙された馬鹿な女、と括られてしまうのだろう。
だがそれで済ませてしまうには少々タチが悪くもあった、少なくとも
女は三年前に高校を卒業し、東京の大学に進学する為に上京して来た。
人も少ないような田舎で育った純朴な少女は、垢抜けていない田舎娘ではあったが、間違いなく美少女でもあった。
はじめは東京の男を怖がって拒絶していた少女。
今風なノリが軽くて面白い、お洒落でセンスがあって都会的、純朴な少女からすればそういうところが新鮮で、男性の魅力と勘違いをしたのかもしれない。
相手に夢中になって行き、本気で愛するようになってしまった少女は、男の本性に気づくこともなく、純潔も捧げ、純朴さを失いすっかり都会の女になって行く。
だがやはり案の定、相手は
少女が自分に本気になると、嫉妬したり束縛しようとしたり、今度はそうした少女の行為が面倒で疎ましくなって来る。
それからしばらく、刺激的なプレイをいろいろと少女に仕込んで堪能した後に、飽きたので捨てるということに。
ここまでであれば、男を見る目がない田舎娘が、都会で悪い男に騙されて弄ばれた挙句に捨てられてという、こちらの人間世界でも異世界でもよくある馬鹿な女の話として
ここから先が、それまでとは異なり、大きく一線を越えてしまっていた。
あまりにしつこく追い掛け続けて来る女に、いい加減にうんざり辟易としていた男は、サークルの飲み会と称し、半ば少女を騙すような形で誘い出し、大学で加入していたヤリサーの飢えた男どもに襲わせた。
それは立派な輪姦レイプであり、男女の痴情のもつれ、その範疇、領域を大きく逸脱してまっている。
そしてそれは
彼女の霊体を通して見た恐怖と耐え難い苦痛、屈辱、そして絶望。
愛する男に売られたことを知った女の悲しみ、怒りと憎しみ、恨み。
それをその身に感じた
何日にも渡り男達の凌辱を受けた女は、その場で命こそは取られなかったものの、脅迫用にその時の有様を動画に撮られ、その後も男達の都合のいい性欲のはけ口として使われる。
それに耐え切れなくなった女が拒むようになると、男達は動画をネット上に流し拡散させた。
数年前に上京して来たばかりの純朴な少女は、わずか数年で社会的に抹殺されてしまったと言える。
そしてさらに数か月後、女は突然倒れ、この病院に運ばれ、感染症にかかっていることが判明、おそらくは男達から性的暴行を受けた際に感染したのだろうと診断される。