元呪術師の男(2)

文字数 1,025文字

……という訳でして

石化事件について、事情を説明した慎之介。

なるほどねえ……
それで俺が呼びだされたってことか

サムエラは顎髭を触りながら、そう相槌を打つ。

だがまぁ、俺は犯人じゃあねえよ

さっきも話したが、俺は今こっちでは呪術が使えねえ

クソアマなら分かるだろうが……

契約ってのは術師への拘束力が思いの外強いからな

こっちの人間が思ってる以上に、おいそれとは契約は破れねえ

まぁ、そうだろね

サムエラの言葉に頷きながら慎之介は肝心な話を切り出す。

我々もですね、サムエラさんを犯人だと思って、呼び出したという訳ではないんですよ

石化された人を元に戻せないか、というご相談でして……

移民申請があった石化魔法を使える魔法使いは、現在移民局で審査中、許可待ちなもので

正直な話、石化を解除出来そうな方が、サムエラさんぐらいしか、まだこっちに来ていないんです

まぁ、大概は石化と解除のワンセットで修得するからな

石化させられる人間がいないのなら、石化を解除出来る人間もいない、そりゃそうなるわな
顎髭を触り続けているサムエラ。

じゃぁ、俺を容疑者として呼んだんじゃないってことは、何か?

もう犯人の目星は付いているってことなのか?

警察は、密入国して来た『ゴルゴンの少女』が犯人だと決めるけているようですが……

なるほど、ゴルゴンねえ……
そりゃまた、随分とすげえのが密入国して来てんな
そこで横から愛倫(アイリン)が口を挟んだ。

あたしは違うんじゃあないかと思っているんだけどね

ニンジャマスターに聞き込みして調べてもらった話じゃあ

そのゴルゴンの娘は、誰も石化させたくないからと言って

あっちの世界では、ずっと独りで城の地下に篭ってたそうなんだよ

そんな子がこっちに来ていきなり、人間を石化させちまったりするかね?

愛倫(アイリン)の推測に、しばしの沈黙が流れ、考え込む慎之介とサムエラ。

まぁ、事故ってこともあるかもしれねえしな

いずれにせよ、石化が解除できれば、何かしら手掛かりはあるだろうよ

ところで、石化しちまった人間の石像は今どこにあんだい?

下手に動かそうとして壊しでもしたら大変ですからね

死んでいる訳でもないとのことですし
なので現場で厳重管理の状態なんですよ

何せこちらの世界では、石化事件なんて初めてのことですから

やれやれといった表情を浮かべる元呪術師のサムエル。

今回は、契約書の内容にもありました例外的措置の範囲となりますので

まぁ、俺の身の潔白を改めて証明する為にも、ここは協力してやるしかねえかな

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